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元芸人が全出場者をレビュー

神田アナ「IPPON女子グランプリ」お笑いのルールに乗らないおもしろさ

謎めいた王林と神田愛花、お笑いの実力を査定!

 先ほども述べたが渋谷さんと滝沢さんは大喜利好きで大喜利そのものに慣れている。この2人はお題に即した答えを書き、空気にあった言い方ができるだろう。

 反対に謎めいているのは王林さんと神田さんだ。果たしてどうなるのだろうと楽しみにしていたが、女性タレント版は誰ひとりキャラクターも答えもかぶらない各者各様の素晴らしい戦い方が見られた。

 1番オーソドックスだったのは渋谷さん。お題に即して自分のキャラクターに合った答えを出していたが、ほかの3名に比べるとパワー不足が否めない。大声で乗り切るような答えが回答の引き出しになかった為、回答そのものの面白さで戦ってしまっていたので、後半スタミナ切れしたように見えた。

 1番パワーがあったというか、奇想天外だったのは神田さん。第一問目「壁ドン以上のキュンキュンを教えてください」というお題。普通なら「〇〇ドン」や「○○クイ」などを変化させていくのが定石だが、神田さんは「ポルシェ、フェラーリ、ブガッティ」と回答。審査ブースも含め、会場は騒然となった。

 神田さん的にはキュンキュンするものを書いただけなのだが、壁ドンを完全に無視するなんて普通出来ない。後半は0点を連発するほどのモンスター。0点か100点という神田さんのルール無用の回答は、芸人にとって勉強になったのではないだろうか。

 そしてもうひとり読めなかったのが王林さん。しかし彼女はセンスの塊だった。大喜利の経験値もなく、定石もわからない中、お題に即した答えはもちろんだが、すこし斜め上を狙った発展形の回答は高得点をただき出した。空気作りも言い方も面白い。「壁ドン以上のキュンキュンを教えてください」に対し「トイレを先に優先してくれる人が好きなので」と前置きをし「ぼうこう莫大男」と答えた。脱帽だ。

 ただ残念なのはその経験値が少ないが故に、お題の真意を読めず見当違いな回答をしてしまう場面があったこと。もし彼女が大喜利に目覚めたら優勝なんてイージーなことだろう。

 そして最後は滝沢カレンさん。彼女はまさに大喜利に目覚めた王林さんといった感じで、元々のセンス、お題の言葉選び、空気作り、言い方、テロップをひっくり返すタイミング、そのほとんどが女芸人を凌いでいたように思う。滝沢さんは期待値が高かっただけにそれを越えたことは本当に凄いと思った。

 僕としてはこの2大会は圧倒的に「女性タレント版」の方が面白かった。それは芸人としてどれだけ大喜利をしてきたかという経験値より、タレントとしてどれだけ大御所と出会い、そういう人達とのトークでアドリブ力を培ってきたかの差が出てしまったように思う。

 面白さで注目されるのは芸人よりタレントの方が遥かに難しい。何故なら芸人はネタを見せる場所があり、縦や横のつながりも多い為、面白さを披露する場所が多い。しかしタレントさんは面白さを求められておらず、つながりも少ない為、1回1回正解を叩き出すしかない。その正解を出し続けたのが滝沢さんや王林さんなのだ。

 決勝で箕輪さんが滝沢さんを降し優勝したとはいえ、ネットでは女性タレント版のほうが大きく取り上げられていた。

 女芸人はこの悔しさをバネにさらなる力をつけてほしい。だって大喜利は本来、芸人が面白さを見せる為の場なのだから。しかも今の女性の若手芸人は、面白い人や変わった感性の人が増えてきている。リベンジする日もそう遠くはない気がする。

 でも……。

「ぼうこう莫大男」……勝てる気がしない…。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/06/29 20:00
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