新潮砲第2弾、皇居内を1時間も“散歩”していた謎の中国人男と皇宮警察の“隠蔽”
#週刊誌スクープ大賞
沖縄女性の性被害を取材してきた著者の静かな怒り
「沖縄の女性は妊娠・出産を自分たちの手にできていない」
沖縄返還50年を機に、沖縄のことがメディアで語られるが、どれもこれも、上っ面だけのことばかりである。
ニューズウィーク日本版では、90年代から未成年の少女たちの聞き取り調査や支援を行っている上間陽子琉球大学教育学研究科教授が一味違った文章を寄せている。
彼女は著書に、沖縄での調査に基づく『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)、エッセー集『海をあげる』(筑摩書房)などがあり、若年出産シングルマザー保護施設「おにわ」の共同代表も務めている。
「復帰50年に当たり、一番考えたことはやっぱり『基地がなくならない』ってことです。記念式典でも基地の縮小、返還に向けて進めていくみたいな話をしていたけど、要らないところをちょっぴり返しているのをすごく大げさに言っている。
政治家たちがスローガン的な言葉を言えば、それを新聞が書き、内実が伴わない言葉ばかりがあふれている。米軍基地が汚染源とみられる水道水や河川の汚染が問題になっても、立ち入り調査もできない。そんなことが強烈に、ずっと起きている。(中略)
1990年代後半からの東京での大学院時代、女子高生の調査をしました。社会学者の宮台真司さんが『援助交際という性的売買をしても傷つかない子たちが出てきた』という議論をし始めた頃です。
でも私は、本当かな、そんなに性規範って軽やかかな、と思っていた。23区内の女子高に3年間調査で入ったのですが、彼女たちの話を聞いて『性規範から自由な女の子たち』なんて嘘だと思った。援助交際でオヤジたちからどれくらいお金を取ったかという話を教室でパフォーマンスのようにしながら、実際にはじっとり傷ついてたりする。相対的に彼女たちは、声を聞かれていないんです。
沖縄の少女たちの経験は、日本の若い女性に起きているさまざまなことの濃縮版だと思う。環境の厳しい地域ほど、下の階層にいる人や若い人の状況はきつくなる。東京の女子高生の問題が沖縄では中学生に表れる。結局、早く大人になるんです」
2006年に琉球大学に職を得て沖縄に帰ってきた、だが、沖縄の女の子の調査はしていなかった。何年かは東京の調査や国際比較調査を行い、沖縄の調査はやっていなかった。
「でも2010年に女子中学生が19歳の少年に集団レイプされ、自死する事件が起きた。そのとき女の子たちの現実をちゃんと知って、伝えるために『沖縄で調査をやろう』と決めたんです。2011年から風俗店のオーナーたちにインタビューし、2012年から彼らが紹介してくれた従業員の女の子たちに話を聞くようになった。
その後、彼女たちの話を『裸足で逃げる』に書きましたが、それは2016年にうるま市の島袋里奈さん(20)が元海兵隊で米軍属の男に暴行・殺害された事件があったからです。
東京でも沖縄でも、調査でレイプの話は聞いていたけど『書けない』と思っていた。若い子+性暴力みたいなことが社会でポルノっぽく消費されるのにどうあらがえばいいのか考え、私の力量では書けない、と。
でも島袋さんの遺体発見を伝えるニュースを見て、『沖縄の若い女の子がまた殺された』って娘の前で泣き叫んだほど衝撃を受け、私は自分の持ち場で何もしなかったのだと思いました」
そこで調査を始め、自分の娘に読ませたいと思い、原稿を書く。被害者は自分の娘だったかもしれないと。
「保護施設『おにわ』を造ったのは調査の中で、ほかのシェルター内での暴力や寄付金詐欺について何件も相談に乗ったことがきっかけです。未成年の子を保護したり、弁護団をつくって動く1年間があって、ある時、もう嫌だ、自分で保護施設を造ろうと思った。調査で10代の妊婦が公園で寝泊まりしている話を聞いていたので、そうした子たちのための施設にしよう、と。(中略)戦後日本では保健師指導で家族計画が教えられたが、米軍支配下の沖縄ではそれができなかった。だから女性たちは避妊法を知らず、闇人工妊娠中絶が横行し、長男ができるまで産み続ける感じだった。復帰が遅れるってこういうことです。沖縄では今も、女性が妊娠・出産を自分たちの手にできていない気がします」
「おにわ」では、女の子たちの自決権を大事にしているという。「その延長線上に性的同意の話があり、生殖の自己決定権もあると思っています」(上間)
女性の視点から沖縄を考える。多くの本土にいる人間に読んでもらいたい示唆に富んだ、静かな怒りが伝わってくる文章である。
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