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『鎌倉殿』大姫の衣装は季節外れ? 丹後局が指摘した以上に厳しい朝廷の“お約束”

頼家は父・頼朝譲りの「女好き」?

『鎌倉殿』大姫の衣装は季節外れ? 丹後局が指摘した以上に厳しい朝廷の“お約束”の画像3
金子大地演じる源頼家(ドラマ公式サイトより)

 最後に、次回の内容にも少し触れておきたいと思います。

 第25回「天が望んだ男」は、その予告編映像から見る限り、頼朝の死を意識させる内容となりそうです。なんだか夜もうまく眠れていないようだし、暗殺されなくても落馬で事故死しそうな雰囲気になってきましたね。「わし(=頼朝)に何かあった時には……」とか「死ぬかと思った~!」というセリフもたくさん出てくるようで、なんだか寂しい限りです。

 その一方で、第25回には「源頼家(金子大地さん)に長男・一幡が誕生」というおめでたいシーンもあるようです。しかし、この子の母親は正室ではなく側室でした。『吾妻鏡』には「比企能員の娘である若狭局」として登場する女性で、ドラマでは「せつ」(山谷花純さん)となるようです。

 出演者発表によると、頼家の正室はドラマでは「つつじ」(北香那さん)となっています。歴史的文献の中では「辻殿」と呼ばれることが多い女性ですが、本名どころか、実家すらよくわかっていません。ウィキペディアには「父は三河源氏の足助重長で、母は源為朝の娘」とありますが、実際には諸説あり、中には源義仲の娘だったのでは、とする研究者もいるくらいです。ドラマの人物紹介に出自が書かれていないところからも、どのようなキャラクターとして『鎌倉殿』で描かれるかはまったくの未知数ですね。情報がほとんどないので、完全に人物像やエピソードは創作ということになるでしょうが、なんとなく頼家との関係は、義経とその正室・さと(郷御前)のような淡白なものとなるのかなという気がしています。

 それにしても、二代目鎌倉殿の妻妾であるにもかかわらず、頼家の正室や側室について確かな情報が少ないのは奇妙というしかありません。たとえば頼家の子で、後に三代将軍・源実朝を暗殺する公暁の母親については、正室の辻殿(ドラマの「つつじ」)だとする説もあれば、側室の若狭局(ドラマでは「せつ」)とする説もあるのです。

 実際の頼家は、辻殿や若狭局といった女性の他にも、記録に残されていないだけでさらに多くの妾を抱えていたのではないか、とも言われています。頼家の子の中には、将軍の三男(もしくは次男)でありながら、『吾妻鏡』で本名の言及さえされない、母親も不詳の男子(後に出家して栄実と名乗る)もいますからね。

 父・頼朝譲りの頼家の好色さは困ったもので、臣下の愛人を強奪する事件まで起こしています。ドラマでは頼朝の浮気に振り回される姿が印象的な従者・安達盛長(野添義弘さん)ですが、頼家はこの盛長の子・景盛の妾に横恋慕し、出張中の景盛の目を盗んで彼女をさらい、わがものとする事件があったのです。景盛が不満を述べると、彼の屋敷に頼家が大軍を率いて攻め込もうとしたそうです。これらは頼朝死後の出来事ではありますが、政子はこの時、身体を張って頼家と景盛の軍事衝突を止めようと奮闘しました。

 このように『吾妻鏡』では確実に“悪役”としてしか描かれない頼家ですが、『鎌倉殿』では狩りは下手でも「曽我兄弟の仇討ち」事件では見事な采配も見せていましたし、今後どう描かれていくのか、ちょっと怖いけれど、楽しみでもありますね。

<過去記事はコチラ>

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:32
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