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ドラマ『美しい彼』はなぜ多くの人を魅了したのか――原作ファンの心も掴んだ魅力

ドラマ『美しい彼』はなぜ多くの人を魅了したのか――原作ファンの心も掴んだ魅力の画像
Paraviより

 最近、BLドラマが世界的なブームになり、見られるドラマの数も飛躍的に増加してきました。日本でも去年あたりから作られるBLドラマの数が増えてきており、昔からBL作品を嗜んでいる私にとってもうれしい傾向です。

 そのなかでも、去年2021年11月からMBS系列にて放送された『美しい彼』は、熱狂的なファンを生むほど話題になりました。映画化が発表された際などたびたびTwitterでトレンド入りとなっただけでなく、アジア圏を中心に海外でも配信され(今年2月からはNetflixでも配信)、Blu-ray購入者特典として開催されたファンミーティングは国外からも視聴できる配信も用意されたほど、日本のみならず海外にも多くのファンを獲得しました。

 あらすじをざっくり説明すると、吃音に悩む“陰キャ”の主人公・平良(ひら)と、スクールカースト上位に君臨する圧倒的カリスマを持つ“美しい”清居(きよい)とのラブストーリー。清居の美しさに魅了された平良が、清居グループのパシリをさせられるようになるが、ある出来事をきっかけに2人の関係が変化していく……という物語です。

 前述の通り先日、続編の映画化が発表され、その人気はまだ伸びて行きそうな予感。そんな私も『美しい彼』に魅了されたうちの一人です。

 『美しい彼』には、ほかのBLドラマにはない、どんな魅力が詰まっていたのでしょうか。

「美しい彼は存在した!」2人の役がばっちりハマっていた

 まずはなんといっても、タイトルにもなっている“美しい彼”に説得力を持たせられたこと、これに尽きると思います。清居はスクールカーストの上位に君臨する人物で、圧倒的な「カリスマ性」と「美しさ」を兼ね備えてなければなりません。清居役の八木勇征さん(FANTASTICS from EXILE TRIBE)は、美しさはもちろんのこと、キング感にプラスして、やや憂いのある感じもばっちり役にハマっていました。「美しい彼は存在した!」そう思わせてくれたことが、このドラマに説得力を持たせてくれていた気がします。

 そしてこの物語の主人公、清居を妄信的に崇拝していく平良役の萩原利久さん。きっとほかのドラマではキラキラオーラを放てるだろうに、このドラマではそのオーラを消し去り、絶妙な平良の“キモさ”を演じています。清居から幾度となく「キモい」「ウザイ」という言葉を投げかけられながらも、清居を見つめるそのじっとりとした目。画面を通して見ている私でさえもゾワっとしてしまう仕草や表情が、「美しい」清居との対比になっていてとても良かったです。

 主役の2人がキャラクターにばっちり合っていたこと、そして2人そろったときの雰囲気の良さ(ケミストリー)が最高でした。最終回、自転車で2人乗りをしていた彼らはまさに「ひらきよ」そのもの! あんなに愛のこもった「キモい」を初めて聞きました……。

 さらに、この2人の一生噛み合わなそうな平行線の恋愛を、平良目線だけではなく、後半に清居目線に切り替えることで、視聴者に納得させるような作りになっているのです。清居目線になって清居の気持ちを知ってしまうと、「こらぁ! 平良ぁ!」と怒りたくなるくらい、今まで見えていた世界が反転します。そこでまた一気に引き込まれる世界観が、見ている人を引き付けて離しませんでした。

原作の世界観を壊さない内容と映像が、原作ファンの心もつかんだ

 『美しい彼』が多くの人を魅了した一番の要因は、原作ファンを巻き込めたことが大きいと私は思っています。ある作品が映像化されるとき、その作品が好きであればあるほど身構えてしまうもの。私も「原作の2人はそんなことをしなーい!!!」と何回ちゃぶ台をひっくり返したことか……。

 『美しい彼』は人気作家の凪良ゆう先生の同名BL小説が原作で、番外編含め4冊が刊行されている人気シリーズ。平良と清居、2人の少しいびつな恋愛関係を、心情描写豊かに描いている作品です。内容的にもディープなので、ドラマ化が発表されるときには原作ファンの不安がる声もちらほら聞こえてくるほど、実写映像化のハードルは高いものと思われました。それでも放送が始まると、「とにかくいいから見て欲しい!」という声がTwitter上で徐々に増え始め、ドラマから原作を読み始めるという逆パターンまで出てきたのです。

 なぜ原作ファンが支持したのか。ドラマ『美しい彼』は、「ドラマでは描くのが難しいかも……」と思っていた原作の名シーンを、少し形は変わっていましたが、素敵な映像にして、きちんと視聴者に見せてくれました。原作の世界観を壊すことなく、丁寧に映像化してくれたのです。特にそれを感じたのが、けがをした清居の指を平良が舐める最終回のシーン。原作では平良が清居の足の爪を切っているときに皮膚まで切ってしまい、とっさに足を舐めるというシーンでした。2人が近づく大事なシーンでしたが、実写化するのはもしかしたら厳しいのでは……と思っていたことを、いい意味で裏切ってくれました。

 「BLドラマを真摯に作ってくれた!」という喜びの声が、最終回後にあふれていたのも納得です。心情がメインの原作通り、見ている人が2人の気持ちに寄り添えるように作られていたことも良かったです。

 原作を尊重して作ってくれた制作陣の皆様、役を理解して真摯に演じてくれた俳優の皆様には本当に感謝しかありません。どれかひとつでも欠けていたら、こんな名作にはならなかったことでしょう。

 多くの人が待ち望んでいた続編である映画化も決まっています! 原作での続編にあたる『憎らしい彼』が映画化されるそうで、期待しかありません。恋人になった「ひらきよ」の、やっぱり嚙み合わないその後の恋の話が見られることを楽しみに、日々を生きていこうと思います。

■番組情報
『美しい彼』
放送終了・配信中 MBS動画イズム / Netflix / Hulu / Paravi / U-NEXT / TVer
※配信は記事公開時点の状況です。配信終了している可能性があります。ご了承ください

出演:萩原利久、八木勇征、高野洸、坪根悠仁、櫻井健人、桃果、マーシュ彩、中村守里、栗山航 染谷俊之
原作:『美しい彼』凪良ゆう(徳間書店)
脚本:坪田文
監督:酒井麻衣
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
幹事会社:MBS、カルチュア・エンタテインメント
製作:「美しい彼」製作委員会・MBS
公式サイト:mbs.jp/utsukushiikare

亜胡(ライター)

BL作品を読んだり見たりするのが大好きなライター。
noteで主にタイ、台湾、韓国、日本のBLドラマの感想を書いてます。
https://note.com/akoako_yu

あこ

最終更新:2022/08/12 00:22
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