『ナワリヌイ』毒殺未遂事件を経てもユーモアを忘れないプーチン政権との戦い
#ヒナタカ #ナワリヌイ
2022年6月17日より映画『ナワリヌイ』が公開されている。本作はプーチン政権への批判で世界中から注目され、タイム誌の2012年版「世界で最も影響力のある100人」にも選出された、政治活動家アレクセイ・ナワリヌイの姿を追ったドキュメンタリーだ。
まず、本作はエンターテイメントとして面白い。予備知識がなくても楽しめる間口の広さがあり、小難しさはほとんどない。今に続くプーチン政権にまつわる理不尽な問題への関心を持つきっかけになるので、ナワリヌイやロシアの事情に詳しくないという方にこそおすすめできる。
シークレット作品として上映されたサンダンス映画祭にて観客賞とフェスティバル・フェイバリット賞をW受賞し、現在(6月中旬)Rotten Tomatoesで99%の批評家支持率を得ていることも納得の、作品としての完成度そのものも褒め称えられる内容だった。さらなる魅力を記していこう。
深刻な状況もユーモアに昇華させる
あらすじはこうだ。若者を中心に絶大な支持を得るナワリヌイはモスクワ市長選に出馬するなど勢力的な活動を続けていたが、政権の最大の敵となったため不当な逮捕を繰り返されていた。そして2020年8月、ナワリヌイは移動中の飛行機内で毒物を盛られ昏睡状態に陥ってしまう。奇跡的に回復を遂げたナワリヌイは自ら調査チームを結成し、毒殺未遂事件の裏に潜む勢力を、意外な方法で暴いていく。
まず驚くのは(彼をよく知る人にとっては当然のことだろうが)ナワリヌイというその人がとてもユーモラスで明るいことだ。例えば、映画冒頭で「もし殺されるとしたら、ロシアの人々にどんなメッセージを残す?」という質問をされると、「そんな質問するなよ。それは僕の追悼映画で言おう」「この映画は面白くする」「僕が殺されたら、退屈な追悼映画を作ってくれ」などと返したりする。
この言葉からわかる通り、ナワリヌイには暗殺の可能性が示唆されており、実際に毒殺未遂事件が起きてしまう。他にも彼は「警察から緑の液体をかけられてヤバい、俺はこのずっとモンスターだ」「有名人になると安全になると思っていたが、大誤算だったよ」など明るく語ってはいるのだが、取り巻く状況はとても深刻なのだ。だが、その深刻さをもユーモアに昇華させながら、毅然と立ち向かう姿勢にこそ、ナワリヌイというその人の最大の魅力があるようにも思えた。
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