佐久間宣行が語る、テレビの未来とコンプラとBPO 「YouTubeよりテレビのほうがまだ緩い」
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テレビ、YouTube、Netflixの中で1番自由なのはテレビ!?
「コンプライアンスをどう思う?」
佐久間曰く、メディアの中で最もコンプラが厳しいのはYouTube(!)だそう。テレビのほうがまだユルい。プロデューサーの裁量で番組作りができるからである。YouTubeはあらゆる表現に厳しく、男性の乳首が映ることさえアウトだ(例:江頭2:50のYouTubeチャンネル「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」)。また、Netflixは配信先の国の文化によってタブーが異なるため、そこへ抵触する部分はカットしなければならない。
テレビとコンプラといえば、避けて通れないのはBPO(放送倫理・番組向上機構)の存在だ。テレビ制作者とBPOの対立構造が取り沙汰されがちだが、佐久間の認識はちょっと違うらしい。
「テレビのルールは(BPOに)決められてるんじゃなくて、『一緒に作ってる』ってイメージで仕事したほうがうまくいくと思ってるの。BPOも、コンプラも、視聴者も、『このへんは大丈夫ですよね?』って、みんなで確認しながら作るイメージでやってる」
「だって、BPOって規制するためにできたんじゃなくて、そこ(自律機関)がないと何かトラブル起きたら一発で終わるから、そのために作った内部組織みたいなところもあるから。俺はどっちも味方だと思ってるんだよね」
かなり価値観が揺さぶられる見解だ。まず、「コンプラが1番厳しいのはYouTube」という事実が我々一般の認識と真逆だし、BPOへの見方が変わりかねない解説でもあった。
芸人の立場から、三四郎とぺこぱも私感を述べている。
「“痛い系”が本当嫌なの! だから、僕的には『よしっ!』と思ってる」(小宮)
「『痛みを伴う笑い』、そういうワードに加担してるじゃないけど、“人を傷つけない笑い”みたいに言われちゃったから、よりそういうところ(“痛い系”)を自分たちは通ってないんですよね。でも、(“人を傷つけない笑い”を)背負った記憶もないですし、むしろやりたくてこういう世界に入ってるのに、そういうことをやらない代表みたいになっちゃってるから、ジレンマはあるよね」(松陰寺)
佐久間がBPOと共存する未来を語った後、多くの芸人が仮想敵とみなすBPOに救われた現状を語る小宮の“らしさ”に笑う。率先して体を張りたがる松陰寺とのコントラストは鮮やか。松陰寺の熱さは、平成以前のバラエティに向けた憧れを感じさせたりもする。
「松陰寺君の肯定は“傷つけない笑い”のほうだって言ってたけど、(お笑い芸人・みなみかわの)システマ(※)と同じ構造でできるよね。『どんなことを味わってもポジティブなことを言えるか?』っていう。苦いものでもからいものでも痛いことでも、『俺、全部ポジティブに変えられる』って松陰寺君が言い張っちゃえば」(佐久間)
(※編集部注:呼吸法によって痛みをなくすロシアの武術)
「ぺこぱの肯定はシステマと同じ」とは、コロンブスの卵だ。本人は「バリバリ体張りたい」と言っているだけに、十字架を背負わされている現状は複雑。時代、そして“キャラ芸人”という出自が絡み合って生まれた苦悩とも言える。
「データ容量が軽い業界から先に変わっていく」音楽業界の現在とテレビの5年後
「20年後のテレビ、ラジオはどんな感じになってると思いますか?」
この問いに対する佐久間の回答が慧眼だった。
「今、音楽業界で起こってることが5年後くらいに映像業界に起こるぐらいのイメージ。基本的に、データ容量が軽い業界から先に変わっていくわけ。音楽業界のほうが先にサブスクが定着したり、みんなYouTubeで音楽を聴くようになったり……っていうのが、たぶん4~5年後に近い形で映像業界にやってくるんじゃないか」
「音楽業界だと曲がすごい短くなってる。イントロも短くなってるじゃん。で、サビがすぐきたりするのよ。それは、(曲を)すぐ変えられちゃうから。今、この番組(『ぺこぱポジティブNEWS』)がまさにそうで、20分じゃん。尺、短くなってるじゃん。そのほうが配信で見てもらえるから……ってことが、もっと進んでいくんじゃないかなって思う」
確かにTVerなどの配信だと、15~30分尺の番組はとても見やすい。昔は当然のように、2時間番組に釘付けになれた。今はYouTubeに慣れたせいもあるが、地上波で2時間尺の番組があると「長い」と思うこともある。2時間特番は、もはや過去の遺物なのか?
「あれは、世帯視聴率を取るためのゲーム理論の中の戦い。“またぎ”(裏局の番組が切り替わるタイミングをまたいで放送すること)をどれだけ作るかってことだから」(佐久間)
一時期の日本テレビは、関係ない番組を2本くっつけ「合体スペシャル」と称し、まとめて放送する手段をよく見せていたが、まさにアレである。
しかし、TVerの普及により“またぎ”を作る策は不毛になりかけた気もする。“世代視聴率を取るゲーム”が本道ではない時代は近いと思うのだ。
「『ゴッドタン』(テレビ東京系)は“上(の時間帯に)行きますか?”って誘いを断って、深夜で粘ったの。世代視聴率のゲームに『ゴッドタン』は勝てるわけないから。(ゴールデンに上がると)たぶん、『マジ歌選手権』を毎週やらなきゃいけなくなって。それだと続かないから。『深夜でコアなことやってコアなファンがいたほうが、イベントとかで生き残っていけるんじゃないかな』って予測を立てたのよ。それはまあ、当たったなと思う」(佐久間)
「マジ歌を毎週やらなきゃならなくなる」という佐久間の予測に、おおいに膝を打った。番組によって、戦い方はそれぞれだ。テレ東が誇る優良コンテンツだったものの、ゴールデン進出後に惨敗した『やりすぎコージー』が頭をよぎった。今は同番組の看板企画「やりすぎ都市伝説」の特番のみ、定期的に放送中である。
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