『トップガン』は本当に名作だったのか? 珠玉のトム・クルーズ出演作品で検証
#U-NEXT #しばりやトーマス
『トップガン』って本当に名作だったの?
アクションスターとしての地位を確立した2017年には、ユニバーサル映画のモンスターたちが『アベンジャーズ』みたいに一同に会するシェアード・ユニバース方式にしようとしたダーク・ユニバースの第一弾『ザ・マミー/呪われた砂漠の女王』に主演。長編シリーズ第一作の口火を切ろうとしたものの、期待されたほどの数字が出せず、評価はどん底でダーク・ユニバース構想はこの一本で打ち切られ、撮り終えていた数作品はお蔵入りとなってしまった。ドル箱のプロジェクトを白紙に戻す男トム・クルーズ!
そんな落差の激しい人生の男が、36年の時間を経ての続編となった『トップガン マーヴェリック』は興行成績、評価ともどもに素晴らしいが、気になるところはある。
メディアでは「あの名作が36年の時を経て続編誕生!」みたいな持ち上げられ方をされているが、『トップガン』って名作だったっけ?
『トップガン』は映画プロデューサーのドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーがつくりあげた独自の表現方法によってつくられた『フラッシュダンス』(1983)とほぼ、同じやり方を踏襲した。それはストーリーとストーリーの間を楽曲でつないでゆく、ミュージック・ビデオのような映画だ。時に音楽は物語の進行を遮る勢いで流れてゆく。
商業主義の権化と言われたシンプソンとブラッカイマーの映画は「映画を芸術ではなくただのミュージック・ビデオに貶めた」中身空っぽの映画として評論筋からは徹底的に批判された。『トップガン』もパーティでトムがナンパしようとした女性が翌日、パイロットの教官だったと発覚するなど、バカバカしい展開の数々に呆れたもんだが、いつの間にか名作という扱いになっているのだった。迷作の間違いじゃないかな……。
こんなひどい歴史修正にも似たことが起こっているのは、36年も経ったら当時の観客の映画の見方が変わっているからではないかと。
例えば漫画の『美味しんぼ』連載当初は山岡士郎と対立する父・海原雄山は明確に「悪役」として描かれていたように見える。それは父に対する息子の立場に作者も読者も近かったからだろうけど、時が経つと家庭をもって子供も生まれるので、だんだん雄山の気持ちがわかってくるようになるともう、雄山を敵視することができなくなる。
昔は『トップガン』なんかバカ映画だと思ってたけど36年も経ったら人間、涙もろくもなるし、烏滸がましくも自分の人生とリンクするような部分も見えてくるし、亡くした友人の息子を自分が一人前にするという展開はそりゃあ泣けるよ!
この内容で『トップガン』の公開10年後ぐらいにつくられてたら誰も感動しなかったと思うね。36年の時間があったからこそ泣ける話になってるんですよ!36年のトムの浮き沈みを経て初めて感動できる映画になった『トップガン マーヴェリック』、ぜひ劇場でお楽しみください。
そしてこの記事で取り上げた作品のほとんどはU-NEXTで観られます。さすが36年間苦労の果てにトップスターになった男の扱いは違うぜ!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事