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細田衆院議長と「ポスター貼りの対価」
お次は、文春の細田衆院議長追及第4弾。
昨年10月31日投開票の衆院選を巡り、細田博之衆院議長(78)が、選挙運動を行った多数の地方議員に金銭を支払い、公職選挙法に違反する運動員買収を行っている疑いがあることが文春の取材でわかったという。
選挙運動費用収支報告書や領収書などを調査したところ、11名の地方議員、5名の元地方議員が選挙運動を行ったこと、金銭の授受を認めたそうだ。
衆院選で、細田は島根1区から出馬して11回目の当選を果たした。
「対立候補だった立憲民主党・亀井亜紀子氏は、前回2017年の衆院選で比例復活している。今回の衆院選では、彼女の比例復活を許さないほど大差で勝つことを目標としていました」(陣営関係者)
細田は選挙後、島根県選挙管理委員会に「選挙運動費用収支報告書」を提出している。それによれば、120名を超える人物に労務費を支出し、このうち11名が現職の地方議員だったという。いずれも公示日である昨年10月19日付で、総額は6万5700円。情報公開請求で入手した領収書からも支払いが裏付けられたそうである。
選挙制度に詳しい小林良彰・慶応大学名誉教授がこう解説する。
「公職選挙法は民主主義の健全な発達を目的にした法律です。それだけに、金銭の支払いに関しては極めて厳格に定められている。報酬の支払いが認められているのは、ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員と、事務員、手話通訳者などに限られます。また、労務費の支払いが認められているのは、機械的な単純作業に携わる人物だけです」
労務費を受け取った地方議員たちが、細田への投票を呼び掛けたりはせず、「機械的な単純作業」に携わるだけだったのか。そんなことはあり得ないはずである。
5200円の労務費を受け取った森脇勇人・松江市議が、このように証言している。
「細田先生が地元に来る時は、街宣カーに一緒に乗って『先生にお世話になってあの橋ができました』などと説明する。県議が付いてこないといかんのだけど、来ないから自分一人で。街頭演説で前説したり」
――マイクを持って?
「そうそう」
――労務費の名目は?
「それはポスター貼り。一枚200円」
――公示日に貼る?
「当たり前だがね。選挙運動費ね」
文春が、細田から労務費の支払いを受けた現職の地方議員11名に取材したところ、全員が、細田陣営の選挙カーに同乗して地元を案内したり、有権者に投票を呼びかけるなどの選挙運動を行っていたことを認めたのである。また、労務費の名目については全員が口をそろえて「ポスター貼りの対価」と答えたという。
「公職選挙法では、ポスター貼りの対価を労務費として支払うことは認められている。『選挙運動はボランティア』が大原則だが、ポスター貼りなどの行為は「機械的な単純作業」と考えられているためだ」(文春)
しかし、政治資金や選挙などに詳しい岩井奉信・日大名誉教授はこう指摘している。
「証言を聞く限り、地方議員たちは選挙運動員の性格が強い。彼らにとってポスター貼りは、選挙運動の“付属的行為”に過ぎません。にもかかわらず、その“付属的行為”の部分だけを切り取って、費用を払うのは、明らかにおかしい。公職選挙法違反の運動員買収と指摘されても仕方がありません」
文春によると、実際、東京高等裁判所で次のような判例も出ている。
「本来無報酬であるべき選挙運動に従事する者がたまたまあわせて単なる事務または労務をも行つたからといつて、それは選挙運動に付随し当然これに含まれるものとみるべきであり、(略)これに対して報酬を支給することはできない」(1972年3月27日付)
運動員買収に当たる可能性が極めて高いようだ。
文春が細田衆院議長に6月7日朝、運動員買収の疑いについて事実関係と見解を問う質問状を送付したが、期限までに回答はなかったそうだ。だんまりを決め込んだまま、参院選が終われば国民は忘れてくれる。そう思っているに違いない。
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