野村周平主演『アライブフーン』が世界に誇るドリフトを魅せた理由
#野村周平 #ヒナタカ
6月10日より『ALIVEHOON アライブフーン』が公開されている。
まず、日本の実写映画で、ここまで「大きなスクリーンと優れた音響設備のある映画館で観てほしい」と心から願える、何よりも“迫力”を前面に押し出した内容も珍しいのではないか。
そのバリューは、特大ヒット中&全ての映画の中でもトップクラスの絶賛の嵐となっている『トップガン マーヴェリック』にも引けを取らない。もちろん、そちらとは比べものにならないほどに低予算ではあるだろうが、「ここまでやれる」ことにも感動があったのだ。
物語としてもシンプルでわかりやすく、子どもから大人までおすすめできる、万人向けの優れたエンターテインメントとなっていた。さらなる魅力を記していこう。
王道スポ根ものにして「ナメてた相手が…」の魅力も
あらすじを紹介しよう。内向的な性格で⼈付き合いは苦⼿だが、 ゲームで驚異的な才能を発揮する⼤⽻紘⼀(野村周平)は、解散の危機に瀕するドリフトチームの一員である武藤夏実(吉川愛)から「リアル」のレースにスカウトされる。初めこそ紘⼀は夏実の父の亮介(陣内孝則)から「ふざけるな!ゲーム野郎に本物のドリフトなんか出来るわけねえだろう!」突っぱねられるものの、すぐにリアルでもドライバーとしての実力を存分に見せつけ、さらに覚醒したテクニックはバーチャルとリアルの壁をブチ破るのだった。
簡潔に物語の魅力を表現するのであれば、「努力と情熱で難関に挑む王道スポ根もの」にして、「ナメてた相手がとんでもない逸材だった」的なカタルシスも得られる内容だ。主人公はオンラインゲーム『グランツーリスモ』の全日本選手権で優勝するほどの実力を持っていて、もちろん現実の世界でもeスポーツは市民権を得つつあるが、それでも劇中では「しょせんはゲームだろ?リアルで通用するわけがない!」と軽んじられている。
だが、そんな主人公ひとたびリアルのクルマを運転し、そして見事なドリフトを見せ付けれると、誰もが「すげえじゃねえか!」と見事なまでの手のひら返し。もちろんすぐには認めない者もいるし、その後も彼はしっかりとリアルのレースで勝つための努力や工夫もする。だが、やはり凝り固まった常識や価値観を、「異端」とも言える者がひっくり返す様は、ある種の気持ちよさがあるのだ。
主人公がいわゆる「陰キャ」であり、レース以外のことは不得手であっても、自分の才能を生かして可能性を広げていく様にも感動がある。主演の野村周平は『ちはやふる』シリーズや『WALKING MAN』(2019)でも内向的な性格の少年/青年にマッチしていたが、今回の「あるひとつのことだけには集中できる」不器用さと「素直に学び取る」誠実さを併せ持つ役柄にピッタリだった。
その「ゲーム野郎がリアルでも大活躍!」というわかりやすい主軸だけでなく、その他のドラマも極限にまでシンプルになっている。ヒロインとの少しだけ恋愛を思わせる関係、仲間とのチームワーク、その対比となるスポンサーだけに媚を売るライバルなど、あまりにストレートでコテコテなスポ根ものの「らしさ」は賛否両論も呼ぶかもしれない。だが、後述する「レースとドリフトの迫力こそを見せたいんだよ!」という作り手の気概を受け取りまくったので、このドラマのシンプルぶりにも本作にはマッチしているし、「これはこれくらいで良い!」と肯定したいのだ。
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