『水ダウ』K.カズミはいるけど、いなかった テレビが映し出す“人”の一側面
#テレビ日記
増田貴久「自分の努力で変われたっていうのが、カッコいいですよね」
ある人物を追うという意味では、1日の『家、ついて行っていいですか?』(テレビ東京系)も興味深かった。この日の放送は「訳ありの天才たちSP」。そこで密着されていた人のなかに、以前、別の番組でも取り上げられていた人がいた。
今年3月に行われた早稲田大学の卒業式。会場近くでカメラを構えていたスタッフに、男性が声をかける。このたび学部を卒業するというその男性は31歳。9浪して早稲田に入学したのだという。この男性、今年の5月9日に放送された『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)で紹介されていた「慎重過ぎる性格ゆえに大学受験で石橋を叩きすぎて9浪した人」である。『激レアさん』では「ハマイさん」と呼ばれていた。
ハマイさんは一度、別の大学に入学した。しかし、京都大学など他大学の学生と交流するなかで、レベルの違いを感じたのだという。受験時の努力が魅力につながっているのではないか。そう考えたハマイさんは、早稲田大学への入学を決意。いわゆる仮面浪人の生活に入った。
ただ、石橋を叩きすぎる性格のハマイさん。願書提出の直前に英単語帳の1ページ目も覚えていないことに気づき、受験から撤退。クイズ番組で早稲田大学の出身者が好成績を収めているのを見て、撤退。大学を卒業したあとは、会社でセールスマンとして働きながら予備校に通うなど受験勉強を続けるものの、やはりいろいろな理由から撤退。なかなか踏み切らない彼に、スタジオの面々は一斉にツッコミを入れていく。
また、会社ではトップセールスを叩き出し20代で月収50万円まで到達していたハマイさん。その会社を辞め受験に専念するなど、『激レアさん』で紹介されたエピソードのなかで、ハマイさんは傍目からは「どういうこと?」という選択を繰り返していく。若林正恭(オードリー)も「変な話!」とツッコむなどして笑いに変え、YouTuberとしても活動している本人も「9浪ポーズ」を披露するなど番組を楽しく盛り上げていた。
一方、『家、ついて行っていいですか?』が描いたのは、ハマイさんのまた違った一面だった。スタッフがついて行ったのは、家賃24,000円の3帖1間の部屋。トイレも風呂も共有だ。部屋に入った彼は、自身の身の上を語り始める。実家の父親は自身が10歳のとき病に倒れたため、家の暮らし向きには余裕がなかった。高校卒業後はすぐに就職しようと思っていたらしい。しかし、高校の野球部でいじめに。大学への進学を決意したのは、そんな環境から抜け出したいと思ったからだという。
会社で働きながら勉強を続けるなど努力してきたハマイさん。そんな彼は、早稲田大学への入学を「いまでも人に誇れる、生涯でも一番になるであろう成功体験ですね」「『あなたをいじめた人は結婚もしてるし、子どももいるし、いじめたことなんてすっかり忘れてんじゃないの?』っていうのはよく言われるんですよ。努力の総量で彼らには勝ってるから、もうどうでもいいなって感じ」と振り返った。
VTRを見ていた増田貴久(NEWS)は言う。
「自分をバカにしてた人たちを見返すためにやったけど、その人たちに伝えるわけじゃなくて。自分の努力で変われたっていうのが、カッコいいですよね」
アプローチの異なるふたつの番組は、1人の人物について異なる一面を描き出していた。テレビカメラの前に「連れてきた」番組と、テレビカメラが家に「ついて行った」番組。ふたつのカメラの焦点の当て方の違いと言えるかもしれない。そしてもちろん、ふたつの番組でも浮き彫りになっていない側面もあるのだ。
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