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『水ダウ』K.カズミはいるけど、いなかった テレビが映し出す“人”の一側面

『水ダウ』K.カズミはいるけど、いなかった テレビが映し出す人の一側面の画像1
『水曜日のダウンタウン』(TBS系)TVer公式サイトより

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(5月29~6月4日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

松本人志「1時間かけて、おそば好きの人を見せられた」

 彼女の名前を知らなかった。K.カズミ。10年ほど前からYahoo!知恵袋で自身の情報を発信し、ネット上の一部では繰り返し話題になっていたらしい。

 Yahoo!知恵袋のアカウントから発信された情報によると、彼女は身長213.3cm、体重222.6kgの巨漢。フライパンを握りつぶす怪力や、1日9食の大食いとの情報もある。ただ、その規格外のフィジカルやエピソードに、ネット上では本当にK.カズミが実在しているのか論争になったりもしていたという。

 そんなK.カズミ論争に終止符を打つ。そう掲げた企画を放送したのが、1日の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)である。

 番組は、ネット上に残された、K.カズミ本人の発信ではない情報から真相に迫っていく。K.カズミは、和食ファミリーレストランのサガミでざるそば食べ放題の記録を持ち、店の公式ウェブサイトにも掲載されている。大食いタレントのもえあずが24段のところ、K.カズミは82段。菅原初代やジャイアント白田らフードファイターによると、その記録は「ありえない」らしい。

 番組は少しずつK.カズミの存在に近づいていく。サガミを通じて記録の正しさを確認し、実際に彼女を見た社員を発見し、彼女にそばを提供した店員に話を聞く。が、実際に目にしたことがある人によると、彼女は巨漢ではなく普通の背格好の女性だという。

 徐々に明らかになってくる真実。真相に近づくほど謎が深まる流れ。番組は最後にK.カズミの連絡先を知る人物にたどりつき、彼女にコンタクトをとるところまでこぎつける。これまでメディアに一切出てこなかった伝説の人物へのインタビューは、顔を隠し、音声を加工するという条件で実現した。

 そこで当人が語ったところによると、そばを82段食べたというのは本当だが、ネット上に出回っている情報は別の誰かが勝手に流したガセらしい。彼女が今回インタビューに応じたのも、自身についての偽の情報が知らないあいだに広がっているのが心外で、真実を伝えたかったからだという。本人はいたって普通の一般人。そばの記録は、食べてたら82段になっただけ。番組は「K.カズミは静かに暮らしたい」とテロップを流してインタビューを終えた。

 K.カズミはいるのか、いないのか。そんな論争に終止符を打つと掲げたVTRがたどり着いた結論は、「K.カズミはいるけど、K.カズミはいない」といったところだろうか。そばを82段食べたK.カズミは実社会にいるけれど、ネットで偽情報を発信しているK.カズミはいない。ひとつの“事実”を核として、さまざまな関連情報が寄せ集められる。そうやって”事実”からかけ離れた“真実”らしきものが生まれてしまう。その真偽を問う論争が、”真実”を既成事実化していく。そんなネット上の情報の転がり方を浮き彫りにしているようだった。

 VTRを見終えた松本人志(ダウンタウン)はこうまとめた。

「要するに、1時間かけて、おそば好きの人を見せられた」

 さて、サガミがウェブサイトに載せていたK.カズミのそば食べ放題の記録。番組がその真偽を追うなかで、「全255店舗のグループ店をもつ上場企業が、こんな捏造を行うとは考えづらい」とナレーションをつけていた。

 同様に、全国に多くの系列局をもつ上場企業が、準備していた爬虫類をロケ中に発見したかのように放送していたり、無人島から自力で脱出しているはずがスタッフの船でイカダを引っ張っていたりなど、そんなことを行うとは考えづらかったりもするが、それはまぁ、うん、おいておこう。

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