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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > “ゲーセン”の知られざる歴史
なぜ駄菓子屋にゲーム機があった? 

「不良の溜まり場」とも蔑まれた“ゲーセン”の知られざる歴史

駄菓子屋ゲーム筐体のビジネスモデルとは?

――川﨑さんの研究で特徴的なのは、ゲームセンター専業の店に限らず、喫茶店の中のブロック崩しやインベーダーゲーム、麻雀ゲーム、あるいは駄菓子屋やおもちゃ屋の一角にSNKなどのゲーム筐体が置かれていたこと、それらの時代背景やそれを可能にしたビジネスモデルがどんなものだったのかを書いていることです。僕も幼少期の記憶として喫茶店のテーブルがゲーム機だった時代のことを覚えていますが、なぜ喫茶店があれを入れていたのかが本を読んで初めてわかりました。

川﨑 私はその世代でないので当時を知る人に話を聞いたり、雑誌を調べていきましたが、80年代前後と今ではサラリーマンの姿が全然違うんですね。今は喫茶店で休んでいると「サボっている」ととらえられますが、かつては営業の外回りの合間に多少ゆっくりしてもよかった。

――スマホもノートPCもない時代には、待ち合わせで手持ち無沙汰になることも多かったですし、滞在者が時間を潰せるものが店舗側に求められていた。インベーダーゲームのブーム時には4万6356店舗もの喫茶店に導入されていた一方、専業のゲームセンターは8260店舗どまりだったとあり、意外に思いました。もともとの喫茶店側からの導入動機から逸脱するくらいの人気を一時は得ていたと。

川﨑 サイドビジネスで入れたがる喫茶店の店主が出てくるほどの流行になっていった一方で、あまりよく思っていないお店もあったんだろうなと思います。だから、ブームが終わるとゲーム機を置かなくなる店も増えました。

 ただ、店としてはあくまで提供しているのは「喫茶が主、ゲームが従」のつもりだったのが、ゲームにハマってそれを主目的に訪れる客も現れ、そういう人がずっと店に居座るのも申し訳ないのでコーヒーを頼む、という好循環もありました。店側も商売につなげるために「ハイスコアの人にはコーヒー券を進呈」といったことをしていたのが面白いところです。

 かつて喫茶店は個人経営の店舗が主体でしたが、今ではスターバックスのようなチェーン店が増え、そういう店ではゲーム機は置きません。喫茶店におけるゲーム機の有無の変化は、ゲームジャンルの流行の変遷に加えて、そうした経営主体や社会状況の変化もあるのだとは思います。

――90年代までは駄菓子屋や書店、レンタルビデオ店にまでビデオゲームの筐体がざらにありましたが、駄菓子屋のように客単価が安いところにすらなぜ、どうやって入り込んでいったのかという謎に対して、リース業者は「筐体を無料で設置してメンテもする代わりに、設置店からマージンをもらう」という“フロントマネー方式”で営業をかけていったこと、また、ゲーム機器企業であるSNKが自身でリース業を行う際に、同時にほかのメーカーに比べてかなり安価に基板販売を展開したことが子ども向けゲームコーナーのリース業者の助けになったことが示されていて、そういう仕組みだったのか、と思いました。

川﨑 私のゲームプレイ環境の原点が駄菓子屋でのゲーム体験なんですよね。私の地元だけでもネオジオが設置されている店が6、7店舗はありました。にもかかわらず、従来のゲームセンター研究では無視されがちで、駄菓子屋研究においてもゲーム機の話はされずにきたんですね。それをある程度まとめることができました。

 赤木さんがフロントマネー形式と呼ぶビジネスモデルはジュークボックスの時代から存在していたのですが、それをリース業者やゲーム機器企業側が持っていたからこそ、かなり広範な普及が可能でした。

 また、SNKやカプコンがゲーム企業としてリース業に入っていったことはさまざまな影響を子ども向けゲームコーナーに与えましたが、いずれにせよお店やリース業者への影響についてはこれまであまり話されていませんでした。このことについては調べている中で明らかになったことを示せたと考えています。

――それから、温泉などにもある子ども向けゲームコーナーにも触れられていますよね。ああいうところには今も根強く残っているけれども、あまり語られない。子ども向けのカルチャーって軽んじられがちですよね。

川﨑 ビデオゲーム研究でも、海外では子どもがどう遊んでいるのかを扱っている一方で、日本では子どもといっても青少年、中高生以上の研究が多い印象があります。結果として、ゲームセンター研究でも対象がそれくらいの子どもたちになりがちでした。

 ジャンケンマンのような子ども向けメダルゲーム機についてはもっと調べたかったのですが、メダルゲーム機は子ども向けに限らず一般的に筐体が大きいものが多い上に、機械式のものは保存が難しく、調べるのが大変なんですね。古いものは業界雑誌を調べるくらいしかできないのですが、可能な限り調査を試みました。

 子ども向けゲームは日本では研究がやや手薄ですが、今もラウンドワンとかに行くと、子どもたちの間で『釣りスピリッツ』(バンダイナムコ)などかなり流行っているゲームがしっかりあるんですよね。家庭用ゲーム機ではなかなか再現が難しいものが、だからこそゲームセンターで生きている。

 今後は子どものゲームプレイの場所の研究――子どもの行動を把握するのは難しいのですが、例えば家の中やファストフード店などでどう遊んでいるかといった研究――も社会学的にできればと思っています。

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