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連載「クリティカル・クリティーク VOL.4」

RHTやMFS他新星が登場!再び絡み合い始めた〈ラップ〉と〈ダンス〉

再び絡み合い始めた〈ラップ〉と〈ダンス〉RHTやMFS他新星が登場の画像1
(写真/Axel Heimken/picture alliance via Getty Images)

 国内のラップミュージックとダンス、その距離感が近年また近づきつつある。

 以前――80年代から00年代前半にかけて――国内のヒップホップとダンスは密接な距離感を保ちながらカルチャーを作り上げてきた。映画『フラッシュダンス』や『ワイルド・スタイル』(ともに1983年)を例に挙げるまでもなく、それら映像でのインパクトから始まった国内ダンスカルチャーは徐々にシーンを形成し、『B BOY PARK』でのブレイクダンス・コンテストに至るまで国内ヒップホップの歩みを音楽とともに伴走してきた。その後、00年代後半以降はヒップホップにおける音楽とダンスはやや乖離してしまった感があるが、しかし両者の関係性は冷めてしまったわけではない。これまでとは異なる形で、音楽とダンスが新鮮な息づかいを聞かせながら新しい展開を提示しつつあるのだ。

 その興味深い盛り上がりは、12年より中学校教育でダンスが必修化されたこと、そこに「現代的なリズムのダンス」という種目が含まれたことを追い風にしつつ、生活のあらゆるシーンでユース層の身体を不規則に揺らす事態を生んでいる。ブレイクダンスやヒップホップダンスといった形態を包含しつつも、もっと“直感的な”舞いを見せるいきいきとしたアテンション重視のノリ。音楽に奉仕するというよりは、視線を求め離さない、コミュニケーション性の高いダンスである。

 今、〈ラップミュージックのリスナー〉と〈ダンスのプレイヤー〉が接近しているそのムーブメントの中心にいる人物として、RIEHATAの存在感に異論を唱える者はいないだろう。仲宗根梨乃から始まり、井上さくらやRIKIMARUなど、充実したダンサー/振付師を抱えてきたシーンの状況下で、いわゆる“SWAG”をここまで浸透させ、日本全国のユース層にきびきびしたキャッチーな、音楽をぐいぐい引っ張るようなダンスを躍らせた功績は今さら言うまでもない。ある種、サウンドよりも目立ってしまうほどのインパクトの強いその動きは、彼女の登場以降世の中を席巻したTikTok的ヴァイブスの流行を予見していた/下地を作ったとも言えよう。

 Awich「どれにしようかな」でのコラボレーションも記憶に新しいが、シンガーとしての活動も展開するRIEHATAが先日リリースした「DREAM ISLAND」は、BENNIE Kのヒット曲「DREAMLAND」をサンプリングしたナンバーだった。ラップも披露することで明確にY2Kオマージュが示されたこの曲は、彼女がチャーミングな振り付けを提案することでTikTokでもヒット、ユース層のハートをつかむことに成功している。さらに先日はDIESELが新たにローンチしたコミュニティハブ「ディーゼル スタジオ」(マロニエゲート銀座)とのコラボレーションも実現し、チーム「RHT」によるジョイフルなダンス動画が発表された。YG「Scared Money feat. J.Cole, Moneybagg Yo」などを筆頭とするラップミュージックをBGMに、エンジョイするダンサーたちの姿がまぶしい。昨年実現したatmos pinkとのコラボレーションに引き続き、「RHT」が今いかに支持を集めている勢力であるかがわかる。

 いま起こっているこれらのエキサイティングな出来事は、K-POPやUSヒップホップの振り付けで名を上げたRIEHATAが国内にてダンスチーム「RHT」(旧RIEHATA TOKYO)を立ち上げた14年以降の活動が結実されたものである。

 2010年代半ば以降の国内ヒップホップ/ラップミュージックの人気拡大は、音楽それだけの充実にとどまらず、RIEHATAはじめReINaらを中心とした「RHT」メンバーの躍進がより身体的なレベルでユース層のノリを形作ってきた部分も非常に大きいだろう。快進撃を続けるこのダンスチームをアイコンとしてリスペクトする全国のダンサーたちと、その磁場を(間接的にでも)受けながらTikTokを駆使しカジュアルにダンスを嗜む層が渾然一体となり、ラップミュージックのリスナーを形成している。

 さらに、SheLovesMeechieへの愛を宣言しながらも日常のルーズなノリをコミュニケーション性の高いダンスに落とし込む、Ninja We Made It.のような存在も現れている。こうして、ヒップホップにおける音楽は再びダンスと切っても切れない関係になりつつあるのだ。

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