堂本剛が新たな「未来」を切り拓く――ENDRECHERI「LOVE VS. LOVE」における挑戦とグルーヴ
#堂本剛 #ENDRECHERI
堂本剛が魅せた、圧倒的なヴォーカルのグルーヴ
そして今回は、堂本剛の優れたリズム感にも触れておきたい。今回はバラードでありながら、ヴォーカルのグルーヴ(踊りたくなるリズムの波)がとても素晴らしかった。
歌い出しをよく聴いてみよう。「Love v. love……」と始まるイントロ。ここは完全にバラードになっているので、一般的にはこういったパートでグルーヴを感じることはないはずだ。しかし、私には分かる。感じられる。イントロですでに、堂本剛はファンクのグルーヴを表現し、声に乗せている。
表面的には流麗なバラードを歌っているように聴こえるかもしれないが、おそらく彼の脳内では、しっかりとファンクのグルーヴが鳴っているはずなのだ。彼は頭の中で大きく「1~2~3~4~」とカウントして歌っているのではなく、例えば「ツタタタ ツタタタ ツタタタ ツタタタ」というように、1小節を16分割して(ファンクの16ビートのリズムで)歌っているはずなのである。そうでなければ不可能なタイミングで、このイントロには非常に細かい抑揚が付けられている。そして、こうした細部へのこだわりが、実は踊れるブラック・ミュージックを作る上で非常に重要な要素なのだ。
これについてはおそらく同じようなことを、堂本剛が前述の『つよしP』の動画で自ら語っている。彼はまず「頭の中でグルーヴが鳴っている」と言い、さらにENDRECHERIでは「ダンサーさんが踊れるファンク」を目指している、とも話していた。
つまり、この楽曲は確かに途中からファンクのドラムが入ってくるが、実は堂本剛のヴォーカルによって、イントロから徹頭徹尾「踊れるファンク・バラード」になっているのである。そのグルーヴは後半になるにつれてさらに盛り上がっていき、最後の瞬間まで途切れることがない。私は、声を大にして言いたい。「ダンサーさんが踊れるファンク」という堂本剛の狙いは、「LOVE VS. LOVE」において完璧に成功した、と。
こうした堂本剛のグルーヴは、きっと海外のリスナーにも届くだろう。それは歌詞が英語だからというだけではない。ファンクのグルーヴというものは、国や、国境や、果ては星々をも越えていくものだからだ。案外、本当に、火星にまで到達してしまうかもしれない。それもまた、最高にファンクである。
素晴らしい作曲&レコーディングチーム
今回の「LOVE VS. LOVE」の作曲は堂本剛と、『GO TO FUNK』でも全面的にタッグを組んでいたキーボードのGakushiが中心となって行われた。
前述の『つよしP』の動画で今回の作曲シーンを観ることができるが、その作業過程も素晴らしかった。堂本剛は「今思いついたことを、今入れていっている」と語りながらどんどんリフやメロディを吹き込んでいたが、完成した楽曲からは、そういった「ぶっつけ本番」という印象がまったく感じられない。
例えば0:57~のバックで鳴っているシンセサイザーのフレーズ、これは1:36~のメインリフの伏線となり、形を変えて引き継がれていく。またこの曲はヴォーカルが「Love v. love」のフレーズを繰り返すため、飽きさせないようにバックのトラックが微妙に、自然に変化し続けていっている。徐々にメインリフは形を変え、ラスト30秒のアウトロのフレーズ(ここもかなりプリンスっぽい)に収束して大団円を迎える――。
こんな緻密な曲を「今思いついたことを、今入れていっている」で作り上げてしまう二人。それは彼らの内部に非常に多くの音楽的な「引き出し」があり、ひとつのモチーフからそれに連なる最適なもの、そしてもっと素晴らしいものを、連鎖的に引き出せているということなのだろう。
最後に、バックトラックの演奏にも注目を。この曲のドラムは『GO TO FUNK』同様にGakushiによる打ち込みである。堂本剛のヴォーカルに寄り添い、しっかりと楽曲のグルーヴと展開を明示していくセンスは、流石の一言だ。レコーディングに参加したマサ小浜によるギター、SOKUSAIのベースも、ブラック・ミュージックのリズム・セクションに必要な音の足し引き(必要な瞬間に必要な音がしっかりと鳴らされていること)を強く感じさせる。国内有数のブラック・ミュージック・プレイヤーの実力が余すところなく詰まった、非常に完成度の高いトラックだと言えるだろう。
この楽曲が堂本剛の、そしてファンの希望どおり、世界へと羽ばたいていくことを私も願っている。「LOVE VS. LOVE」がそんな「未来」を導き出せるように……。私も引き続きこの曲を聴き、その魅力を語っていきたい。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事