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「Ty」のタグが付いた『全米を狂わせたぬいぐるみ』あのブームのその後

「Ty」のタグが付いた『全米を狂わせたぬいぐるみ』あのブームのその後の画像1
U-NEXT『BEANIE MANIA -全米を狂わせたぬいぐるみ-』公式サイトより

「あのブーム、どうなったんだろう?」と思うことがある。『妖怪ウォッチ』だ。

 2013年にニンテンドー3DSで発売されたゲームは売れ行きがそれほど伸びなかったが、翌年から放送開始されたテレビアニメで人気に火がつき、玩具のDX妖怪ウォッチと妖怪メダルが各地で品切れ続出、年末に公開された劇場アニメが公開2日で興収16億円という東宝映画史上最高記録を打ち立てた。

 ところが今ではすっかりブームも過ぎ去り、おもちゃ売り場で妖怪メダルは投げ売りされ、去年公開された第7弾映画はイオンシネマ限定公開という扱いに。毎年出ていた新作ゲームの発売は2021年に途切れてしまい、テレビアニメとマンガがひっそりと続いているのみ。ライバルだったポケモンは未だに新作が出ているのに……。

 90年代に全米で発売されたぬいぐるみ、ビーニーベイビーズのブームの栄枯盛衰を辿るHBO-max制作のドキュメント『BEANIE MANIA -全米を狂わせたぬいぐるみ-』を観た。

 シカゴ西部のネイパービルは「全米一子育てしやすい街」として知られる閑静な住宅街。そこで暮らす中流以上の住人たちは子供のためにおもちゃを買ってあげるのだが、ある日おもちゃ売り場であるぬいぐるみを見つける。“Ty”というタグのついたぬいぐるみ“ビーニーベイビーズ”を。それは独立したばかりのタイ・ワーナーという男が93年ごろから販売したぬいぐるみで、クマやウサギからエビ、カエルといった生き物ぬいぐるみのデザイン性は皆無というか、そのまんまでこれならアンパンマンのキャラクターのほうがよほど、デザイン性に優れているといった代物。

 ところがこれが売れた。売れた理由のひとつは、種類が異常に多い。発売当初で87種類もあり、子供はあれも欲しいこれも欲しいとなり、そのうちに母親のほうがハマって集めだす。そしてもうひとつの理由は集めにくいってことだ。

 タイは秘密主義で、ビーニーベイビーズの商品情報を秘匿した。全種類のリストを公開せず、ある日突然新商品が店に並ぶ。しかも大手の店には商品を卸さない。小規模の個人商店などにしかなく、トイザらスやウォルマートには一個も売っていない。タイの会社は新興メーカーなので大手に卸せばライバルと競り合わねばならず、それなら小さい店に安価で卸して商品棚を独占する方がいい。

 シカゴ中のおもちゃ屋をぬいぐるみを求めて東奔西走するうちに、同じような同士がいることがわかると、互いに情報を交換しあい、やがて収集家のグループが出来上がる。

 集めにくいとなると逆に集めたくなるのが収集家なので、ぬいぐるみに憑りつかれてしまった彼女たちは他の州にまで足を延ばす。ある収集家は全米の小売店に電話をかけて「商品があるか」と聞く。一カ月の電話代は2000ドルを突破した。

 この時点ではあくまでシカゴのみの話題に過ぎなかったが、タイがピープル誌のインタビューを受けた96年、ブームは全米に拡大した。

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