「Ty」のタグが付いた『全米を狂わせたぬいぐるみ』あのブームのその後
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ただのおもちゃから蒐集品へ……
タイはこの状況を利用した。97年の1月1日に引退(在庫のみで以降は販売終了する)するビーニーベイビーズを発表すると告知。ウェブサイトにカウントダウンの時計を載せた。人々は「今のうちに買っておけ! 値上がりするぞ!」とおもちゃ屋に押し寄せた。こうなったら遊ぶためのおもちゃじゃない。収集家ではない人たちが投機の対象としてぬいぐるみを買うようになる。転売屋の誕生とともにブームはさらに加速する。
全米初のビーニーベイビーズ大会が開かれ、会場では収集家たちがぬいぐるみを売り買いし、ドル札が飛び交った。この年には初のガイドブックが出版され、100種類以上の出版物が創刊。市場には偽物商品があふれ、本物かどうかを見分ける「ビーニー鑑定士」なるものまで現れた。そういったブームをタイ・ワーナーはなぜか憎らし気に見ていた。ガイドブックの編集者を「権利を侵害した」と次々告訴する。
彼はメディアに露出しないことで知られ、このドキュメントでもパブリシティ用の画像ぐらいしか出てこない。あらゆる企業が提携を望んだが、そのほとんどを撥ねつける。どこでもだれとでもコラボするキティちゃんとは大違い。
最初に提携したのはマクドナルド。ハッピーミール(日本でいうハッピーセット)のおもちゃにティーニーベイビーズという小型のぬいぐるみをつけたのだ(日本でも2000年代にハッピーセットのおまけとして売られた)。
全米のマクドナルドに客が殺到した。ある収集家は近所の子供たちを大勢連れてハッピーミールを買うと「次の店に行くわよ!」と車を飛ばした。こんなにいっぱいのハンバーガーは食べきれない子供たちはぬいぐるみだけ取って後はゴミ箱に捨てていく。たちまちハンバーガーのゴミ山が出来て問題に……って仮面ライダースナックと同じことやってるよ! 歴史は繰り返すのか。
この頃になるとブームの負の問題が炙り出された。ビーニーベイビーズを配送しているトラックが襲撃され、奪われる事件が勃発するようになったので配送トラックは積み荷を隠すようになる。あるトラックはコンテナの扉が壊れて配送中の道路にぬいぐるみを散乱させてしまった。するとビーニーベイビーズ欲しさに道路に車を止めて落ちたぬいぐるみを拾いはじめる人が出た。いくらなんでも必死すぎ!ただのぬいぐるみだよ!?ついには賄賂をもらって工場からぬいぐるみを盗み出す従業員まで現れる。何かが狂い始めていた。
果てしなく右肩上がりを続ける会社の売り上げも90年代末には数多くの問題が噴出し、過剰供給による二次市場の値崩れによって下降し始める。タイは最後の賭けにでた。2000年問題を控えた99年12月31日にビーニーベイビーズの販売すべてを終了すると宣言。ただしウェブサイト上の投票で「継続」を希望する声が上回れば販売は続けると。
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