『きさらぎ駅』2ちゃん都市伝説の映画化にゼロ年代和製ホラゲを思ふ「どうあがいても、絶望」
#映画 #2ちゃんねる #都市伝説 #恒松祐里
ホラーゲーム「SIREN」や「零」のようで、どこか懐かしい
本作は「きさらぎ駅」に迷い込む、主となる人物の一人称視点で物語が展開されていく。迷い込む人物が変われば、視点もその人物に切り替わる。誰に話しかけて、誰を助け、誰を犠牲にするかといった選択の一つひとつが、その先の展開を変化させる。そして、奇怪な音楽と共に“何か”が起こる。まさにゲームのようだ。
「ほんとにあった怖い話」的なオリジナル・ビデオ作品感というのだろうか。永江監督の作風を考えれば仕方ないというべきかもしれないが、令和に制作されたとは思えないCGをはじめ、全体的にチープ感が漂っている。しかし、それがこの映画の難点かというと……実は、そうでもない。
個人的には、1997年に発売されたプレイステーションの「ゲゲゲの鬼太郎」を思い出した。というか、2000年代に発売された和製ホラーゲーム「SIREN」や「零」などのオマージュのようで、どこか懐かしい。
そうなってくると、本作全体に漂うチープ感は、モデルになった都市伝説「きさらぎ駅」の発祥時期(きっかけとなった2ちゃんねるの書き込みは、2004年1月だったと言われている)に合わせて、2000年代前半感の演出を徹底的に追求したことによるもの……の、はずだ。と思えば、一周回って味わい深いものにすら感じてしまう。
映画というものは、常に同じ“目線”で観てはいけないと筆者は考える。例えば、同じ今年のアニメ映画といっても、「しまじろう」の映画とディズニー・ピクサーの映画では、制作費も作風も、そして質も違うはずだ。この2つを同じ目線で観れば、「しまじろうはクオリティが低い」と思ってしまうのが一般的な感覚だろう。でも、「そういうことでない」というのは、誰もが理解しているはずだ。
本作も、映像的な部分で言うと粗が目立つかもしれないし、どうしてもそこにネガティブな意見が集中してしまうかもしれない。だが、何とは言わないが大金をかけた大手の娯楽作品よりも、物語としてはわりとまとまっている。
観る側が“目線”を調整することが、広く楽しく映画を楽しむコツなのだ。本作はそれを最も要求される作品だろう。「どうあがいても、絶望」と、途中で視聴を諦めてはならない。修行僧のごとく、菩薩のごとく、その境地に達することができるかどうかで、本作の評価は極端に変わってくるはずである。
ただ……傑作とは言わない。
『きさらぎ駅』
2022年6月3日より全国公開
出演:恒松祐里、本田望結、莉子、寺坂頼我、木原瑠生、瀧七海、堰沢結衣、芹澤興人、佐藤江梨子
監督:永江二朗 脚本:宮本武史
制作プロダクション:キャンター
配給:イオンエンターテイメント/ナカチカ
製作:2022「きさらぎ駅」製作委員会
(キャンター / イオンエンターテイメント / ナカチカ / BBB / 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ)
©2022「きさらぎ駅」製作委員会
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事