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「アトピー性皮膚炎の原因を発見」九州大学と岡山大学の研究グループ発表

「アトピー性皮膚炎の原因を発見」九州大学と岡山大学の研究グループ発表の画像1

 九州大学と岡山大学、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは5月2日、アトピー性皮膚炎などの慢性的な強いかゆみを引き起こす原因のひとつとなるタンパク質を、世界で初めて発見したと発表した。
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id960.html

 アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などに伴う慢性的な強いかゆみは、何回も繰り返す、過剰な引っ掻き行動を起こし、それによって皮膚の炎症が悪化し、かゆみがさらに増すという悪循環に陥る。

 厚生労働省によると、アトピー性皮膚炎の推定患者数は約51万人と見られているが、日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」では、生後4カ月から6歳では12%前後、20~30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかとなっており、実際のアトピー性皮膚炎患者数は数百万人に至ると考えられるとしている。

 研究グループの発表によると、過剰な引っ掻きによって皮膚の炎症が悪化し、かゆみがさらに増すという悪循環は「かゆみと掻破の悪循環」と呼ばれ、かゆみを慢性化させる大きな原因のひとつと考えられている。

 だが、かゆみがなぜ慢性化するのか、かゆみと掻破の悪循環がどのような仕組みで形成されるのかなどのメカニズムはよくわかっていなかった。

 ただ、近年のかゆみの仕組みに関する基礎研究から、からだにはかゆみを皮膚から脳まで伝える神経路があることが分かってきた。

 そこで、研究グループは何回も繰り返し皮膚を引っ掻く、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎モデルマウスで研究を行い、その原因を調べた。その結果、モデルマウスは皮膚からのかゆみ信号を脳へ送る脊髄神経(かゆみ伝達神経)の活動が高まっていることが明らかになった。

 そこで、マウスの爪を切り揃え皮膚への引っ掻き刺激を抑えると、かゆみ伝達神経の活動の高まりが起こらないことを見出した。さらに、そのかゆみ伝達神経の活動の高まりには、かゆい皮膚を繰り返し引っ掻くことによって、皮膚と脊髄をつなぐ感覚神経で増えるNPTX2というタンパク質が原因であることを発見した。

 NPTX2(neuronal pentraxin 2)は、神経細胞の活動が高まると作られるタンパク質で、神経から放出された後、次の神経の細胞膜にあるグルタミン酸受容体をクラスター化し、その神経活動を高める働きがある。このNPTX2が感覚神経の中を通って脊髄へ運ばれ、かゆみ伝達神経に到達していた。また、NPTX2を無くしたマウスでは、脊髄のかゆみ信号伝達神経の活動の高まりとかゆみが共に抑制された。

 この結果、かゆい皮膚を何回も引っ掻くことにより、感覚神経でNPTX2が増え、それが神経の中を通って脊髄へ運ばれ、かゆみ伝達神経に作用してその神経活動が高まり、さらにかゆみを生むという仕組みが明らかになった。

 現在、アトピー性皮膚炎など慢性的な強いかゆみには、抗ヒスタミン薬などかゆみを抑える医薬品が使われているが、十分な効果が得られていない。

 研究グループでは、「今後、NPTX2が神経で増えるのを抑えるような化合物、あるいはNPTX2の作用を阻害するような化合物が見つかれば、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などで生じる慢性的なかゆみに有効な治療薬の開発につながることが期待される」とコメントしている。

 アトピー性皮膚炎などでは、多くの人が苦しんでおり、早期に新たな治療薬が開発されることを期待したい。研究結果は5月2日、国際科学誌「Nature Communications」のオンラインサイトに掲載された。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/05/28 11:00
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