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『真空ジェシカ』が削られず「初志貫徹」できるテレビ

テレビ番組でもこのやり方は通用するのか?

 だがこれは自分たちが主役でいられる記者会見だからこそ出来ることで、他の芸人も多数出るようなバラエティ番組になるとこうはいかない。その理由は川北さんのボケの形だ。

 この記者会見でもそうなのだが、MCと川北さんさえいれば成立してしまいガクさんが必要ではなくなる。逆にMCではなくガクさんがツッコミをいれたとしたら、真空ジェシカ二人の世界となり他の芸人がいらなくなる。つまりこのボケは個人芸であり、ほかの芸人も笑いを起こせるような団体芸ではないのだ。まさに「良くいる若手芸人」になる前のテレビに出だての芸人。ここから出演機会が多くなるにつれ「削られていくのだろう」と思っていた。

 しかし彼らは全く削られることなく、ほぼ同じ状態で戦い続けている。それが特にわかるのがTBSで放送されている朝の情報バラエティ番組『ラヴィット!』だ。初登場は2月2日。番組のオープニングトークから真空ジェシカは持参した小道具を使ったり、コメントでボケるなど。なりふり構わず果敢に攻めた。

 その日は代役MCのアンタッチャブル柴田さんや、マジカルラブリーなどと歯車が噛み合わず、滑るという結果になってしまった。本人たちもその結果にショックを受け、生放送終わりに収録した『あちこちオードリー』(テレビ東京)で「俺たちは面白くしようとしただけなんです!」とかなり落ち込み反省していた。

 普通ならここらあたりから多少丸くなるはず……だがしかし、これで終わらないのが「真空ジェシカ」だった。丸くなるどころかさらに大きな牙をむくことになる。

 5月4日には『ラヴィット!』に再び登場。大人しくするどころか、初登場の屈辱を晴らすと言わんばかりに前回持参した小道具をよりパワーアップさせてきたのだ。前回はお笑い芸人ニッチェ江上さんの顔と髪が逆になっている”逆ニッチェ”という小道具だったのだが、今回は江上さんの顔と髪がぐるりと一回りついていてしかも回転するという”横のインフィニッチェ”、さらにお面を破っても破っても江上さんの顔が出てくる”縦のインフィニッチェ”を繰り出した。しかも最後は、ジローラモさんのお面が出てくる始末。どれだけボケれば気が済むのか。

 この日はMCが麒麟の川島さん、そしてコメンテーターにアンタッチャブル柴田さんと見取り図の2人が出ていたので、全方向から真空ジェシカをフォローすることができ、どんなボケも笑いに変えられたというのも大きな要因かもしれないが、前回とは打って変わって笑いを起こしていた。

 さらにこの放送で証明されたのが、真空ジェシカの2人は、大喜利が面白いということ。ネット上でも称賛する声が多かった。その中に「大喜利面白いんだから小道具封印すればいいのに」という意見もあったらしいが、それは違う。大喜利も面白いし、小道具も面白いというのが真空ジェシカなのだ。

 ただひとつ勘違いしてはいけないのは、この日の真空ジェシカが笑いを起こせたのは彼ら個人プレイではなく、真空ジェシカを中心とした協力プレイがあったからこそ、というのはとどめておきたい。

 真空ジェシカのお2人にはこれからも「平々凡々」とはならず「初志貫徹」の精神で、ほかの芸人たちと「共存共栄」し、「縦横無尽」に活躍してほしい。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/05/29 11:30
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