『20歳のソウル』神尾楓珠を心の底から讃えたい理由
#神尾楓珠 #ヒナタカ
5月27日より『20歳のソウル』が公開されている。本作はある応援曲にまつわる実話を綴った、中井由梨子によるノンフィクション小説の映画化作品だ。
本作は「どういう物語かを知らずに」観るのも良いのではないか。後述もするが、映画は原作小説と全く異なる構成が取られており、主人公であり実在の人物である浅野大義を全く知らない人、初めてこの物語に触れる人だけが得られる驚きと感動もあると思うからだ。
もちろん原作小説を読んでいる方にも、新たな感動があることだろう。主演の神尾楓珠を筆頭とする若手俳優の“輝き”も堪能でき、彼らが演じたキャラクター(実在の人物)のかけがえのない時間を切り取る尊さも存分にあるので、青春物語を好む方にもぜひ観てほしいと願う。
ここからは「どういう物語か」を含む、さらなる魅力を綴っていこう。何も知らずに観たいという方は、先に映画をご覧になってほしい。
実在の青年の「できることを」追う物語
あらすじはこうだ。吹奏楽部に所属する高校生の浅野大義(神尾楓珠)は、顧問の高橋先生(佐藤浩市)に影響を受けつつ青春を謳歌していた。彼が野球部のために作曲したオリジナルの応援曲「市船soul」は、試合で演奏されるとたちまち得点を呼ぶ「神応援曲」として語り継がれるようになる。高校卒業後の大義は教師を志し音楽大学へ進学するが、彼をガンの病魔が襲い……。
言ってしまえば、本作は20歳という若さで生涯の幕を閉じた、実在の青年の足跡を追う「難病もの」でもある。ただし、単純な「死んじゃってかわいそう」的なお涙ちょうだいで終わる内容では全くない。直近で2022年3月より劇場公開され大ヒットした『余命10年』もそうなのだが、主たるメッセージは病気の当事者以外にこそ向けられていると言っていい。
そのメッセージとは、ひとえに「限られた時間の中でせいいっぱいに生きる」ことだ。『20歳のソウル』の主人公である大義は望まずして病魔に侵され、治るかもしれないという希望を一旦は持つも、ガンの進行は容赦無く彼を絶望まで追い込んでいく。だが、そうであっても、大義は音楽への情熱を失わず、限られた時間の中で「自分ができること」を見つけていく。
当たり前のことだが、人は誰でもいつかは死ぬし、限られた時間の中で生きている。20歳で亡くなった青年が、残りわずかな時間でできることを模索し、そして「遺されたもの」を描く物語からは、彼よりもはるかにたくさんの時間をもらっている我々が、いかに恵まれているかも思い知らされるだろう。
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