今週の『金ロー』玉木宏『極主夫道』ヤクザコメディが生まれるシビアな現実
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
ヤクザものの亜流が生まれ始めた背景
日本のヤクザものといえば戦前、戦後すぐの次郎長ものや国定忠治といった侠客映画からはじまり、60年代東映の鶴田浩二、高倉健らによる任侠映画ブームが起き、任侠ものが廃れた70年代には『仁義なき戦い』を皮切りとする実録ヤクザ映画ブームが誕生。モデルになったヤクザの組長が射殺される『北陸代理戦争』で実録路線は打ち止めとなるが、80年代に誕生したVシネマにヤクザものはレンタルビデオのコンテンツとして復活。
いずれの時代もヤクザものはアウトローのヒーローという側面を持ち、テレビ、映画の世界の1ジャンルとして根付いてきたが暴対法の施行によりヤクザをヒロイックに描くことが難しくなると、ヤクザものというジャンルはレンタルビデオの世界だけに押し込められていく。そうなるとヤクザを従来のイメージと異なる面から描こうとする作品がつくられはじめる。
ヤクザが落語家になろうと奮戦する『タイガー&ドラゴン』、老人を振り込め詐欺で食い物にしているヤクザが次期幹部になるために老人介護の現場に身を投じる『任侠ヘルパー』、任侠組織の跡取りお嬢が不良ぞろいの高校の教師となって彼らを導いていく『ごくせん』、腕っぷしは強いが学校に通ったことがないため頭の中身は空っぽな若頭が年齢詐称して高校卒業を目指す『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』……。
いわば『極主夫道』もこれらアウトローのヒーローとしてのヤクザ像をストレートに打ち出すことができなくなったために生まれた「新しいヤクザもの」の系譜につながるひとつと言える。
また『極主夫道』では堅気になったヤクザのセカンドライフという側面もある。龍は基本、真面目なので婦人会の会長(MEGUMI)などには足を洗った男として受け入れられているが、「元ヤクザなんて!」と色眼鏡で見られ、トラブルの火種になることもあるのだが、龍はトラブルの数々に腕力ではなく人と人のつながりや話し合いで解決を試みる。テレビドラマ全10話を通じてケンカで解決する場面がほとんどなく、毎回のオープニングで大勢を相手に暴れまわる玉木宏が映るので毎回ド迫力のアクションが見られるのかなと想像してたので意外でした。けれど「元極道は堅気の世界に受け入れられるにはどうすればいいか?」という話でもあるので、そこで昔取った杵柄とばかりに大立ち回りを演じてたら、意味が無くなっちゃうよねえ。
金ローの特番ではドラマ最終回から1年半後という設定で単ある再編集ではなく、6本の新作ドラマが観られる。さらに6月には劇場用の新作も公開されますよ!
姿かたちを変えて生き残る、ヤクザものは永遠に不滅の人気ジャンルなんだなあ。ヤクザものドラマ、舐めたらあかんで!!
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