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特撮好きはシン・ウルトラマンよりこっちを見よ!? おバカ映画の巨匠・河崎実の『タヌキ社長』

映画『タヌキ社長』

 おバカ映画の巨匠・河崎実監督の『いかレスラー』(2004)、『コアラ課長』(05)、『かにゴールキーパー』(06)に続く“不条理動物シリーズ”復活作にして、最新作となる『タヌキ社長』が5月20日から公開されている。

 観れなかったら観れなかったで、なんの支障もないが、それでもこのシリーズが復活するとなると、妙な懐かしさを感じてしまった人もいるのではないだろうか。

 河崎実は日本のロジャー・コーマン(B級映画の帝王)やエド・ウッド(史上最低の映画監督)……というと言いすぎかもしれないが、『ハウス・オブ・ザ・デッド』(03)や『アローン・イン・ザ・ダーク』(05)など、ゲームを映画化してはことごとく駄作に導く、ウーヴェ・ボルあたりとなら同列に並べたいところだ。

※河崎実監督、町あかり、レインボーの座談会も必読!!

 ただ、そんな河崎実監督、おバカ映画道を邁進するブレない姿勢を貫いているというだけで、駄作ばかり量産しているかというと、実はそうでもない。好みは極端に分かれるかもしれないが、前出の『いかレスラー』や『ヅラ刑事』(06)など、味わい深い作品は少なくないのだ。

 予算をかけたメジャー映画と比べてしまうと、本作のチープさには驚くだろう。例えば、『シン・ウルトラマン』とか。だが、それこそが河崎実作品の醍醐味だと思って、温かい目線で見守ってもらいたい……。

【ストーリー】
信楽矢木雄、58歳。彼は一代で信楽酒造を業界有数の企業に仕立て上げた傑物だ。実直で誠実なタヌキ社長に秘書の房子は密かに想いを寄せている。
しかし、房子に片想いをしているライバル酒造の社長が信楽酒造を潰そうと画策していた。タヌキ社長と信楽酒造の運命はいかに!?

※これよりネタバレを含みます!

ふざけているように見えるが…こっちだって特撮へのリスペクトは本物!!

 “不条理動物シリーズ”はもともとイギリス映画『えびボクサー』(03)に触発されて製作された企画であるし、本作も特撮とは関係がないように感じるかもしれない。だが、人間と動物の織りなすコミカルなドラマには、『快獣ブースカ』(66)や『がんばれ!ロボコン』(74)、もしくは「東映不思議コメディーシリーズ」といった、特撮コメディが前提にある。河崎実は、その系譜を勝手に受け継いでいるのだ。

 筒井康隆の小説をベースにした映画『日本以外全部沈没』(06)も河崎実が監督したが、そのパロディ元となった小松左京の小説の実写映画『日本沈没』(73)で主演を務めた藤岡弘、を起用するなど、メタ的な遊びも入れてくるところも、もともと知識があるからこそできること。

 より直接的なものとして、河崎実は『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』(08)や『遊星王子2021』(21)など、かつての特撮作品の“続編”も制作している。バカにしているように感じてしまうかもしれないが、河崎実に特撮作品へのリスペクトがあることは確か。『遊星王子2021』は、梅宮辰夫が主演した映画版ではなく、テレビシリーズの全身タイツ版がベースとなっていて、50年代の特撮を現代にそのまま蘇らせるとチープになってしまうという皮肉の効いた作品でもあった。

『三大怪獣グルメ』(20)も、おそらく元ネタは東宝怪獣映画の『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』(70)だろう。今年、B級映画好きを震撼させて話題を読んだ迷作『大怪獣のあとしまつ』(22)よりも先に、怪獣処理の仕方を模索する作品を撮っていた。

 現在大ヒット公開中である『シン・ウルトラマン』(22)で庵野秀明が見せた特撮リスペクトとはまた違ったかたちではあるが、河崎実も、紛れもなくリスペクトの末にある作品を作り続けているのだ。

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