世界に認められる堂本剛ファンク――ENDRECHERI『GO TO FUNK』の魅力
#堂本剛 #ENDRECHERI
さまざまなファンク・レジェンドからの影響
今作も過去のアルバム同様に、全体的にP-Funkの影響は大きいだろう。「ENDRECHERI POWER」は特にそれが色濃く感じられる。重たいグルーヴのドラム/宇宙的なシンセサイザー/チャント(唱和)で歌われるサビ/バックにホーン。これは「Dr.Funkenstein」(1976年)に代表される、P-Funkの定番スタイルそのものではないか。
他にも、「Get out the 地球」で地球と外宇宙を持ち出すアイデアは、「地球ツアー」と銘打ったP-Funkの設定(P-Funk Mythology)を思わせ、アルバム参加当時は弱冠11歳だったスーパードラマー・CHITAAによるイントロは、P-Funkの伝説のライブ盤における「Do That Stuff」(1977年)のようである。
さらに言えば、「勃」の歪んだギターによるファンクは、P-Funkにおけるファンカデリックのスタイルだろう(気になる方は1975年の「Get off Your Ass and Jam」などを聴いていただきたい)。このギターも堂本剛が自ら弾いており、彼のファンク愛を強く感じるところである。
「摩って舐る」ではP-Funkの「Flashlight」(1977年)からメロディーを引用(「未来へ廻りながら いまを 愛にしたいな」♪の箇所)。そもそもこの曲は、タイトルが「サステナブル」の当て字(さすってなぶる)になっている。そういった遊び心を入れつつ、セクシーな歌詞に仕立て上げていくのはプリンスの影響だと思われる。
「蜜」のイントロの「アゥ!」はマイケル・ジャクソンを想起させるが、私はそのバックで鳴っているドラムを含めて、プリンスの「Get On the Boat」(2006年)のオマージュの可能性を考えている。ENDRECHERIなら、マイケルよりプリンスだろう。
もちろん、ENDRECHERIのスタイルはそれだけではない。「愛scream」は、ゴーゴーと呼ばれるワシントンDC発祥の80年代のファンクに聴こえる。ENDRECHERIは過去にも「FUNK TRON」(2019年の『NARALIEN』収録)でゴーゴーを取り入れたと言われており、こんなマニアックなスタイルを狙ってくるところにも、やはりファンクへの深い愛を感じてしまう。トラブル・ファンクの「Hey Tee Bone」(1987年)あたりを聴けば、グルーヴの類似(強いハネ)が分かるだろう。
こうした80年代ファンクの香りは、『GO TO FUNK』の全体から感じ取れる。これは今回、全ての曲に鍵盤やアレンジなどで参加しているGakushiの功績も大きいだろう。80年代はデジタル・ファンクの時代だったので、シンセサイザーを極めた人物の参加によって、音色に類まれな説得力が生まれているのである。
さらにクレジットによれば、Gakushiはほとんどの曲でホーンやドラムの打ち込みを担当している。このアルバムに生の管楽器は入っておらず、また多くの曲のドラムは打ち込みだと思われる。コロナ禍で接触を控えるためにその方法が取られたらしいが、プリンスやキャメオを始めとした80年代ファンクも、ホーンやドラムの打ち込みを重視していたため、結果的に、より当時のサウンド/グルーヴに近づいているのではないかと思う。
それにしても、「ENDRECHERI POWER」「Make me up! Funk me up!」「ヌルってたい」「沼ンティ」などが、堂本剛とGakushiの二人だけでレコーディングされているという事実には、本当に驚かされた。二人の圧倒的なテクニック、グルーヴ、そして信頼関係が伝わってくる。
「愛を生きて」は一転して、流行のシティポップ風のファンク。シティポップの生きる伝説、山下達郎からも高い評価を得ているENDRECHERIだけに、こういった曲もさらりと演奏してしまう。これも自らギターとベースを演奏して、昭和のグルーヴを巧みに表現している……。
ENDRECHERIは今年の夏、『SUMMER SONIC 2022』に出演することも発表された。過去の『SUMMER SONIC 2019』では約1時間、ほぼMC無しのノンストップでファンクの宴を繰り広げ、観客を大興奮へと導いたと言われている。ファンクは人々を踊らせるために存在する音楽であるため、この日の彼らのステージは、まさにファンクの真髄に迫っていたのではないだろうか。
ファンクの歴史に新たなページを生み出していくENDRICHERIは、国内だけでなく、ますます海外でも注目されていくことだろう。その未来に、グルーヴに、これからも大きな期待をしていきたい。
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