世界に認められる堂本剛ファンク――ENDRECHERI『GO TO FUNK』の魅力
#堂本剛 #ENDRECHERI
サブスクリプション型音楽配信サービスで音源が解禁され、国外からも注目を集め始めている堂本剛のプロジェクト「ENDRECHERI」。昨年リリースされた最新作『GO TO FUNK』をもとに、彼が鳴らす音楽の魅力を、著書『ファンクの歴史』を持つファンク研究家で自身もミュージシャンであるDr.ファンクシッテルーさんに語っていただいた。
2021年のファンクアルバムベスト20
堂本剛のファンクは本物だ。今年ソロデビュー20周年を迎える堂本剛は、そのソロキャリアの中で、継続的にブラックミュージックの「ファンク」を演奏してきた。
ファンクの歴史は長い。1960年代に誕生し、1970年代に栄華を極め、1980年代にはヒップホップの発展に大きく貢献した。ヒップホップはファンクがなければ存在しなかったし、現在のR&Bシーンも同様だ。ブルーノ・マーズも、ザ・ウィークエンドも、ファンクがあったから今のスタイルがあると言える。
そして、ファンクの歴史を彩る偉大なるレジェンドたち――スライ&ザ・ファミリー・ストーン、プリンス、そしてP-Funk。これらのサウンド、ステージング、グルーヴを取り込み、現代に生きるひとりの日本人として再解釈、唯一無二のファンクを生み出しているのが、堂本剛こと「ENDRECHERI」だろう。彼もまた、長い長いファンクの歴史の、新たなる1ページなのだ。
それを証明するかのように、彼のファンクは徐々に海外にも広まり、高く評価され始めている。今年1月に発表された、ファンク専門の米音楽メディア「Funkatopia」が選ぶ「2021年のファンクアルバムベスト20」に、ENDRECHERIのアルバム『GO TO FUNK』が選出された。しかも、他のアルバムはプリンスやタワー・オブ・パワーなど、正真正銘「本物のファンク」だった。
もちろん「Funkatopia」は、堂本剛が日本で有名だから選んだわけではないだろう。サウンドやグルーヴ、何よりひたむきにファンクを愛している姿が、プリンスたちのアルバムにも比肩すると考えたのではないか。それは音に出る。そして、私も、それを感じることができる。「これは本物だ」と。
それではここから、その『GO TO FUNK』の魅力について、ファンク研究家としての視点で語っていこう。
圧倒的な歌の「個性」と、熟練のテクニックによる「演奏」の両立
まず、「Make me up! Funk me up!」「ヌルってたい」のグルーヴ(踊りたくなるリズムの波)に圧倒される。堂本剛の歌唱法、メロディーは一般的なJ-POPのそれとは大きく異なり、本場のファンクを強く意識したものになっている。ラップのような滑舌でメロディーを彩る歌唱法はファンクの本質に迫っているし、また一聴して日本語に聴こえないように歌うやり方も、意味よりもグルーヴを重視するファンクと抜群の相性を誇る。
現在、どこを見渡しても、日本語を使ってここまで個性的な歌い方でファンクを作曲しているシンガーソングライターは、おそらく他に存在しない。この堂本剛の圧倒的な「個性」、堂々たる斬新なスタイルが、多くのファンク・レジェンドの影響を受けているENDRECHERIのサウンドを、ただの模倣に終わらせることなく、新時代のファンクへと昇華させているのだ。
そして、グルーヴの源は歌だけではない。堂本剛のギターも、もはや一流のファンク・ミュージシャンの域だ。「Make me up! Funk me up!」のギターカッティングは全曲を通して白眉であり、何度聴いても驚くが、これが本人による演奏なのである。ここまでのギターを弾けるようになるには、相当な修練、そしてファンクへの愛がないと不可能だろう。
堂本剛は複数の楽器を操るマルチプレイヤーで、「ヌルってたい」などではギターだけでなくベースも披露しているが、やはりグルーヴや音選びのセンスがずば抜けている。
自ら作曲し、歌い、演奏する。彼の高潔な魂が、一途にファンクのグルーヴに注ぎ込まれている。これらの「個性」と「演奏」をもって、私はENDRECHERIのファンクを「本物だ」と断言したい。(1/2 P2はこちら)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事