コント系ドラマ『捜査一課長』、ナイツ塙の“棒演技”を約5年越しに伏線回収するもおふざけすぎて騒然
#ナイツ #鷲見玲奈 #塙宣之 #捜査一課長 #内藤剛志
塙の棒演技を公式設定に落とし込もうとするウルトラC
それにしても、さっきから塙の台詞が多い。1話丸ごと彼にスポットが当たるのは、5年目にして今回が初めてらしい。結果、しみじみと塙の棒っぷりを痛感する仕様になった。
例えば、凌雲邸の外で様子を窺っていた鷲見の姿を塙は発見、思わず彼は驚きの表情になったが、その表情さえ棒だった。棒演技ならぬ棒表情の塙。その様子に気付いた平井真琴(斉藤由貴)から「どうかした?」と声を掛けられ、「いえ、なんでもありません……」と返した塙のリアクションも、物凄いレベルで棒だ。
事件に際し、警視庁は捜査本部を設けることに。でも、塙はそこへ参加できないようだ。被害者の凌雲が塙の知人だからである。関係者ゆえ、捜査から外された塙。だから会議中、彼は部屋の外で立って(棒立ちして)いた。さっきからずっと棒の塙。
今回の容疑者候補には、鷲見も含まれている。凌雲邸で家政婦をしていた鷲見は、数年前に妻を亡くした塙宅にも家政婦として通っていた。そして事件当日、塙と鷲見は夜に2人で会っていた。オープニングのプロポーズのくだりがそれだ。
塙と鷲見を結びつけた人物が警察内にいる。それは、サイバー事件対策室の谷保健作。演じるのは、塙の相方・土屋伸之だ。ヤホーで検索するナイツ(ヤホー漫才)だから、土屋の役名は「谷保健作(やほけんさく)」。この名前を考えた人は天才ではないのか? ところで、なぜ谷保は塙と鷲見を知り合わせたのだろう。
「奥さんを亡くしてからの奥野(塙)は、本当に見ていられませんでした。心に大きな穴が空いたようで、感情が顔に出なくなり、言葉も抑揚をなくして、まるで棒のようでした」(谷保)
塙の棒は演技が未熟だからではない。過去のトラウマで心を失くしてしまった男の演技をしていただけ。そんなもっともらしい言い訳を作り、後付けで棒演技を設定へ落とし込みにいく無茶。5年越しというロングスパンで、棒演技の伏線を強引に回収しにかかったのだ。棒を公式設定にする脚本が攻めすぎだし、そもそも人を「棒のよう」(谷保)とする形容詞が聞いたことのない表現だ。出演者総出で塙の棒をいじりまくる、『捜査一課長』の大胆なスタイル。
土屋 「奥野(塙)は美月さん(鷲見)のおかげで、徐々に感情を表に出せるようになったんです」
斉藤 「あれでも感情を出せるようになってんだ……」
なんだ、このメタ演出は。
ナイツ塙と錦鯉の回想シーンが完全なるコント
塙の上司である内藤が、塙の過去を明かした。
「あいつ、ああ見えて昔は熱血刑事だったんだ」(内藤)
ここで始まったのは、突然の回想シーン。“熱血刑事”だった塙が取り調べを行っている場面である。「いい加減にしろ、いい歳して恥ずかしくないのか!」と塙が掴みかかったのは、錦鯉の長谷川雅紀。どうやら、長谷川は何かの事件の被疑者のようだ。そして、興奮する塙を「少し落ち着いて!」と制止するのは刑事役の錦鯉・渡辺隆である。
塙 「北海道でお母さん、泣いてるぞ。そんな息子に育てた覚えはないってな」
長谷川 「……」
塙 「お前には、人の心がないのか!?」
長谷川 「……刑事さん、私がやりました。私が錦鯉を17匹盗んだんです! おふくろに可愛いエプロンを送ってやりたくて」
渡辺 「エプロンってなんだよ、おい」
塙 「もっといい物、買ってやれよぅ(号泣)!」
長谷川 「刑事さぁ~ん(号泣)!」
いよいよ、ふざけすぎだ。画面に芸人しかいないし、普通にコントにしか見えない絵面。しかも、錦鯉2人の服が漫才の衣装そのままなのだ。白スーツだから確かに長谷川は反社に見えるし、渡辺は完全にベテラン刑事である。他にもいろいろな要素が回想シーンに詰め込まれていた。
・北海道は長谷川の本当の故郷。
・昔から“刑事顔”だと言われている渡辺。
・「お前には人の心がないのか!」と怒鳴った塙本人が、心の見えない棒演技をしている。
・錦鯉が錦鯉を盗んだ。
・「M-1グランプリ」17代目チャンピオンの錦鯉だから17匹の錦鯉を泥棒。
・俳句は17文字で表現する文化である。
・「キャラメルは銀歯泥棒」のフレーズを叫ぶ長谷川自身が泥棒に手を染めた。
・取調べ中も渡辺がツッコミ役に。
・錦鯉が優勝した瞬間に落涙した“熱い男”塙が、ここでも長谷川のために号泣。
・錦鯉に1票を投じ、彼らの人生を変えた塙と錦鯉の関係性。
・自白した長谷川と抱き合う塙の姿が、M-1優勝時の錦鯉の姿と酷似。
いろいろとぶっ込みすぎである。あと、放送日は「こどもの日」だから鯉を絡めたと読むこともできるし、ナイツと錦鯉は漫才協会所属の芸人同士である。つまり、ほとんど漫才協会による余興だったのだ。やたらと芸人を起用したがる『捜査一課長』スタッフ。TBSの日曜劇場枠より芸人の使い方が大胆だと思う。それでいて、塙以外の芸人の芝居がうまかったという事実は無情だ。
「伝わってはいないかもしれませんが、奥野(塙)は本当に熱い男なんです」(谷保)
「伝わってはいないかもしれませんが」という台詞で、塙の棒をダメ押しした土屋。Netflix『浅草キッド』のビートきよし役で評価を得た土屋は、いわば“ナイツの演技うまい方”だ。こっちは棒じゃない。近藤芳正のワークショップに通ってまで演技力を身に付けようとした塙より役者として格上だと言える。
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