「ヴィランは本当に悪なのか?」悪役を演じたい役者魂をくすぐる『スーサイド・スクワッド』
#映画 #宮下かな子 #宮下かな子と観るキネマのスタアたち
子供の頃からなぜかダークヒーローが好きだった。アンパンマンだとドキンちゃん。ポケモンはロケット団。セーラームーンで好きな戦士を問われたらセーラーマーキュリーと答えていたが、姉妹でセーラームーンごっこをする時は大抵悪役を快く引き受けていたし、一番好きなキャラクターはアマゾネスカルテットという敵集団だった。
「ゆめゆめ疑うことなかれ 夢みるこどもの夢の夢」というアマゾネスカルテットの決め台詞があって、小学校からの帰り道、友達と別れて1人になると、この台詞を呟きながら道を歩いていた。ちょっと不気味な小学生。
現実と異なる世界に憧れていた子供時代は、アマゾネスカルテットの台詞を唱えれば、見えないものが見えるのではと期待したし、『ナルニア国物語』の影響でクローゼットの奥に進んだら何処かに行けないかと試みたり、別世界との境界線はないものかと常に思っていた。別世界に憧れを抱いていたのと同じく、平凡な生活を送る自分には出来ない事をする、自分とかけ離れた存在のダークヒーローに魅力を感じていたのだと思う。
平凡な容姿の私にはまだ経験がないが、出来るのならばお芝居で悪役に挑戦したいし、今でもダークヒーローには憧れがある。そんな私が近年観た作品のキャラクターで好きになったのが、ハーレイ・クインとジョーカー。2016年に公開されたデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』を観てそのキャラクター性に魅了されたのだが、昨年8月、新たにジェームズ・ガン監督の『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』が公開された。現在Netflixにて配信中でランクインしているのを目にし鑑賞した。
全員終身刑の超クレイジーな“極”悪党達が、減刑と引き換えに政府に招集され、極秘ミッションに挑む。彼らの身体には爆弾チップが埋め込まれていて、命令に背けば即爆死させられる状態。生きるか死ぬか予測不可能なデス・ミッションが強制的に幕開けするサバイバルアクションストーリー!
16年公開の『スーサイド・スクワッド』に登場したジョーカーは残念ながら本作には登場しないが、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインをたっぷり拝むことができる。クレイジーだけど愛らしい彼女のキャラクター性にただただ終始目が離せない。更に今回はR15指定のため、前作以上にバイオレンス描写が多くアクションも刺激的。バイオレンス系を見慣れていない私にとっては目を覆ってしまうくらいハードなシーンが多数あったが、柔軟な身体や自由自在で華麗な足技、両手に銃を持って360度回転しながら大きく立ち回るハーレイ・クインの姿にはうっとりさせられる。
ハーレイ・クインの他にも、個性豊かなキャラクターが勢揃い。スーパーマンを病院送りにした男ブラッドスポート(イドリス・エルパ)、平和のためなら暴力も厭わないピースメイカー(ジョン・シナ)、人食い鮫のキング・シャーク(声:シルヴェスター・スタローン)、ネズミの大群を操ることができるラットキャッチャー2(ダニエル・メルシオール)、身体から水玉を出すポルカドットマン(デヴィッド・ダストマルチャン)など。
ツッコミどころ満載のユニークなキャラクター性に惹きつけられるのは勿論、悪党たちそれぞれのバックボーンがしっかり描かれているのも魅力の1つ。クレイジーなだけではない、彼らのバックボーンから垣間見える人間性が、視聴者に愛される秘訣なのだろう。もしかしたらダークヒーローは、ヒーローよりも人間らしい。彼らの奥行きこそ、私がダークヒーローに惹かれる理由なのだと思う。その要素を、テンポ感や熱量を変動させずにコミカルな展開の中にきっちり入れ込まれているのが本作の凄み。
何が正義で何が悪なのか。そもそもこれを考えること事態が間違いなのかもしれない。世間が作ったものさしが正しいとは限らない。目の前にある自分が信じるべきものを信じる、それがシンプルで何より重要なことなのだと愛すべき悪党たちが教えてくれている。
とにもかくにもやりたい放題な悪党たちの怒涛のアクションと、アメリカンジョークの数々にスカッとすること間違いなし! 愛すべき悪党たちの活躍を存分に楽しめる作品だ。
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