日経新聞『月曜日のたわわ』炎上も通過点―ジェンダー広告の炎上史
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日本経済新聞への広告掲載をきっかけに、意見が拮抗する炎上騒動へと発展したマンガ『月曜日のたわわ』(講談社)。
日経新聞に、胸が大きい女子高生の日常にフォーカスしたマンガ『月曜日のたわわ』に関する広告が掲載されたが、これに対して「いまだ女性を性的に搾取している」「痴漢を助長する」といった声があがり、あげく国連女性機関が日経新聞に抗議するなど話が大きくなっていった。ここでは、女性の権利を毀損し性差別を助長することへの反対と、マンガによる表現の自由を求める声、といった構図が表面化した。
「昨今、ジェンダーに関わりそうなコンテンツについて広告担当者は、細心の注意を払っているはずです。ただし、今回はもともと同人作品がルーツにあるマンガ作品であり、それがすでに大手出版社・講談社から出版され1年以上たっています。コンテンツ自体のファンもいますし、新聞広告というメディアでもまさかここまで、非難の声があがることは想定していなかったのでしょう」(広告代理店関係者)
とはいえ、ジェンダーを取り巻く広告では制作者と世論のズレが広がるばかりだ。
例えば、2019年の西武そごう「わたしは、私。」広告だ。「女の時代なんて、いらない?」というコピーとともに、女優・安藤サクラの顔に投げつけられるのはパイ。
本件では、「思い切り女性の顔をパイで汚して、『男も女もない』と言われても……」「結局女性に我慢を強いているだけでは……」などの声があがった。
「古くはコピーライターである糸井重里による広告が業界で評価されてきた西武の広告でしたが、最近は世論とのズレを感じることも増えてきています。本件でも安藤サクラのモノローグによって雰囲気自体は良いものの、やはり“顔パイ”はマズかった。女性への世間の風当たりを表現したものでしょうが、演出手法としては暴力的な面が色濃く出てしまっています。制作側の考えが浅かったですね」(CMディレクター)
また21年、不動産会社エイブルの新聞広告「『女性初』が、ニュースなんかじゃなくなる日まで。」も大きな論争に。本広告では女性と男性の経済格差を取り上げ、エイブルとしては「女子割」などを用意することで女性を応援する、という内容だったが……。
何度でも声を上げよう。
エイブル、今朝の新聞広告 pic.twitter.com/rrTZb1UIQN— ことばと広告@kotobatoad) January 20, 2021
「本件は広告の表現そのものよりも、『女性の活躍』を謳う企業なのに、役員に女性が一人もいない、ということで炎上しました。それはつまり広告を出稿した企業がどんな体制で経営をおこなっていることかさえ見られているということ。新聞広告ひとつとっても会社の“身体検査”が必要であることが浮き彫りになった例ですね」(前述・広告代理店関係者)
さらに21年、テレビ朝日「報道ステーション」の「こいつ、報ステみてるな」だ。
若い女性が友達に語りかけるという設定で、化粧水などの身の回りの話とともに、消費税の値上げや国の借金などニュース番組で取り上げる内容のことも織り交ぜ話す様子に、「こいつ報ステみてるな」というコピーで締める本CM。いわゆるZ世代の若者を対象としたキャンペーンだったが、出稿直後から「女性軽視」「若い女性をバカにしている」などと大炎上した。
「本CMに関しては当の若者からも『何を言いたいのかわからない』といった言葉があがるなど、そもそもCMとしてうまく機能していなかった。業界内でもテレ朝の若手ディレクターが適当に作ったんじゃないかなどと言われており、CMの作りが悪い、あげくジェンダーへの目配せも足りない、といった最悪の事例といえるでしょう」(前述・CMディレクター)
昨今の広告制作については、ジェンダーにまつわることがらで不快なものでないか、関係者も十分に注意を払ってきている。だが、こうした意識が高まってきたのもまだここ数年のこと。引き続き議論が進み認知が広がる過程においては、次なる炎上広告は出現することだろう。
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