サウナ大ブームの裏で…原油価格高騰で銭湯が存続危機
#サウナ
銭湯が存続の危機を迎えている。入浴客の減少に輪をかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大。加えて、ここのところの原油価格の高騰が追い打ちをかけている。
銭湯は60年代には全国に訳1万8000軒もあった。厚生労働省の「令和2年度衛生行政報告例の概況」によると、95年には1万軒、12年には5000軒を割り込んだ。その後も減少が続き、16年に4000軒を下回り、20年には3231軒にまで減少している。
銭湯を管理する「公衆浴場法」では、銭湯を「一般公衆浴場」、スーパー銭湯や健康ランドを「その他の公衆浴場」と区分している。
銭湯は減少が続いたのに対して、スーパー銭湯や健康ランドなどその他公衆浴場は11年に2万2368軒まで増加を続け、ピークを付けた。ただ、その後は減少傾向を辿り、20年には11年のピーク時よりも7.3%減少し2万723軒となっている。(表1)
銭湯の衰退には、様々な理由があるが最大の原因は「家風呂」の普及だろう。総務省の「平成20年住宅統計調査」によると、住宅の浴室保有率は95.5%とほとんどの家庭が家風呂を備えている。
少子高齢化の影響も見逃せない。少子化による入浴客の減少に加え、好んで銭湯を利用していた入浴客の高齢化による入浴客の減少も響いた。
また、衰退する多くの産業にも同様のことが言えるが、少子高齢化により、経営者の高齢化や跡継ぎ不足の問題が顕在化している。
さらに、銭湯の水道水の沸かし湯とは違い、天然水を使ったスーパー銭湯や健康ランドが増加し、入浴客が奪われた。これらのスーパー銭湯や健康ランドは、銭湯にはないサウナや飲食施設など様々設備を備えた大型施設が多いため、個人経営の銭湯では対抗するための設備投資が難しかった。
こうした厳しい経営環境に加え、近年では新型コロナの影響で「3密回避」による入浴客の減少が起きた。
加えて、原油価格の高騰により、燃料費など固定費が経営を大きく圧迫している。
銭湯とスーパー銭湯や健康ランドなどは公衆浴場法で区分されていることは前述した。スーパー銭湯や健康ランドなどは利用料金を自由に決められるのに対して、銭湯はその公共性から入浴料金の上限を各都道府県が決めている。他にも、設備などに様々な規制がある。
このため、入浴客の減少を入浴料の引き上げでカバーできないため、入浴客の減少は売り上げに直結する。一方で、銭湯の入浴料金は簡単に値上げできない側面もある。
全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)によると、各都道府県の大人の入浴料でもっとも高いのは、神奈川県と大阪府の490円、もっとも安いのは長崎県と宮崎県の350円となっている。
レジャー要素の強いスーパー銭湯や健康ランドに比べ、銭湯は日常生活の一部だ。大人の入浴料金が490円なら1か月30日間、毎日入浴すると1か月で1万4700円の入浴料がかかる。2人家族なら2万9400円と約3万円が入浴料に消える。入浴料が高くなれば、客離れが進むというジレンマがある。
こうした厳しい経営環境にありながら、驚くことに銭湯の倒産は非常に少ない。その公共性から入浴料金の上限を各都道府県が決めている半面、各都道府県によって様々な優遇措置が取られているためだ。
例えば、銭湯の水道料金には減免措置が適用されている。また、土地と施設の固定資産税にも減免措置が適用されている。補助金を投入している自治体もある。
この結果、銭湯は入浴客が減少しても営業を続けることができた。そうは言っても、入浴客の減少は利益の減少につながり、経営難を招くことに変わりはない。
このため、古くからの銭湯の多くは住宅地や地元繁華街の中にあり、立地条件や土地が広いことで不動産業へ転身するケースが多いようだ。
このように、日本の庶民文化の一端を作ってきた“銭湯文化”は、今や存続の危機を迎えているのだ。
ちなみに、銭湯の多い都道府県の1位は東京都、2位は大阪府、3位は青森県で、スーパー銭湯や健康ランドの多い都道府県の1位は東京都、2位は静岡県、3位は長野県となっており、銭湯とスーパー銭湯や健康ランドとも、1位は東京都となっている。(表2)
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