新型コロナの影響でホームレスになる人が増加 浮かび上がる“切り捨て”の実情
#新型コロナウイルス #ホームレス
ホームレスのうち6.3%が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でホームレスとなったという調査結果を厚生労働省がまとめた。
厚労省は4月26日、「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果」を公表した。この調査は概ね5年毎に地方公共団体の協力を得て実施し、今回で5回目。
ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)結果について|厚生労働省
ホームレスの定義は、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」。
調査は2021年11月に実施され、東京都23区、政令指定都市、21年1月の概数調査でホームレスが20名以上の報告があった市を対象に、1300人を目標に個別面接を実施し1169人の回答を得た。
厚労省では、この調査結果をもとに全国には、3824人のホームレスがいると推計している。
調査結果によると、ホームレスの95.8%が男性、4.2%が女性となっている。16年の前回調査と比較すると男性が0.4%減少しているのに対して、女性が0.4%増加しており、女性のホームレスが増加していることがわかる。
ホームレスの平均年齢は63.6歳で前回調査時よりも2.1歳増えており、年齢構成としても70歳以上が34.4%ともっとも多く、前回調査に比べ14.7%も増加しており、高齢化が進んでいる。(表1)
ホームレスのうち生活場所が決まっている者は79.5%(前回調査から2.0%増)となっている。生活場所としては、公園がもっとも多く27.4%(同5.6%減)、次いで河川が24.8%(同1.5%減)となっている。(表2)
ホームレス期間では、10年以上がもっとも多く、40.0%(同5.4%増)、次いで5年以上10年未満が19.1%(同1.4%減)となっており、ホームレス期間が長期化していることがわかる。(表3)
ホームレスのうち48.9%(同6.7%減)が仕事をしており、内容としては「廃品回収」が66.4%(同4.4%減)と最も多かった。意外だったのは、仕事をしているホームレスの月平均収入は約5.8万円(同2.0万円増)と国民年金(老齢基礎年金)の平均支給月額の約5.6万円と大差なかったことだ。
収入金額では、月額1万円未満が6.0%(同3.6%減)、 1万~3万円未満が18.7%(同12.0%減)、3万~5万円未満が27.5%(同6.1%減)、5万円以上が47.9%(同22.0%増)と5万以上がもっとも多い。
ホームレスに至った理由(複数回答)では、「仕事が減った」が24.5%(同2.3%減)、「倒産や失業」が22.9%(同3.2%減)、「人間関係がうまくいかなくて、仕事を辞めた」が18.9%(同1.8%増)が上位3で、人間関係による原因が増加傾向にある。
ではホームレスに対する福祉・支援はどのようになっているのか。
ホームレスのうち健康状態が「あまりよくない」「よくない」との回答が34.9%(同7.8%増)あるが、このうち治療等をうけていない者は63.5%(同2.6%増)を占めている。
しかし、「巡回相談員にあったことがある」(78.9%)、「シェルターを知っている」(69.2%)、「自立支援センターを知っている」(68.3%)の半面、「巡回相談に相談した」(29.5%)、「シェルターを利用した」(21.9%)、「自立支援センターを利用した」(13.3%)と低く、生活保護制度の利用経験も32.7%にとどまっている。
この背景には、「今のままでいい」と考えているホームレスが40.9%(同5.6%増)を占めており、「今も求職活動をしていないし、今後も求職活動をする予定がない」と答えたホームレスが75.5%(同2.9%増)もいることが関係している。
では、新型コロナはホームレスにどのような影響を与えたのだろうか。
ホームレスになって3年未満の者のうち6.3%が新型コロナの感染拡大の影響でホームレスになったと回答している。
また、ホームレス全体では新型コロナによって、「収入が減った」が15.3%、「食べ物の量が減った、食べ物を得にくくなった」が10.0%上位になっている。その一方で、新型コロナのワクチン接種を行ったホームレスも27.6%いた。
新型コロナの感染拡大により、生活困窮者への様々な支援が行われた。政府は新たな緊急経済対策でも子育て低所得世帯に対して、子ども1人あたり5万円を支給する方針だ。一方で、ホームレスという社会的弱者は“忘れられた存在”になっているのではないだろうか。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事