ピスタチオが解散 「ネタ至上主義」が加速するヨシモト∞ホールと芸人の多様性
#吉本興業 #ヨシモト∞ホール #ピスタチオ #よしもと漫才劇場
吉本興業所属のお笑いコンビ・ピスタチオが5月31日をもって解散することを発表した。
ピスタチオは、東京NSC13期生の伊地知大貴と小澤慎一朗の2人で2010年に結成されたコンビ。白目をむきながら「な~んのっ?」などと独特なフレーズを繰り出す漫才で2015年にブレイクし、近年はヨシモト∞ホール所属として主に劇場で活躍していたが、約12年のコンビ活動に終止符を打つことに。
※解散の理由はYouTubeで詳しく説明してくれている
現在のヨシモト∞ホールは、22組の「レギュラー」芸人と、その下部組織となる40組の「ユース」で構成されている。レギュラー組からの降格はないが、ユース組はさらにその下のクラスに所属する芸人との入れ替え戦があり、シビアなネタバトルを強いられている。
「ピスタチオはユース組に入っていたんですが、なかなか結果を出すことができなかった。特にここ最近のヨシモト∞ホールは、賞レースの決勝進出者を多く輩出していて、“ネタ至上主義”的な空気が強く、レベルも相当高くなっています。そんななかで、ピスタチオは“一発屋”というイメージを払拭できなかった部分もあったと思います」(お笑い事務所関係者)
2006年にオープンしたヨシモト∞ホール。当初は、オリエンタルラジオとほっしゃん。(星田英利)がMCを務める生放送番組『ヨシモト∞』(ヨシモトファンダンゴTV)の会場として使われていた。その後、2007年に若手芸人のバトル方式のライブ『AGE AGE LIVE』がスタートすると、若い女性ファンを中心に大人気となる。
「AGE AGE LIVEは、主に女子高生のファンがメインで、可愛らしい雰囲気の芸人や“青春感”が強いネタが人気でした。芸人たちも女子高生にウケないと結果が出ないということで、“客に寄せたネタ”をやるようになっていきました。その結果、多くの女性ファンを掴んだものの、お笑い賞レースにはあまりフィットしない芸人ばかりが大量に生まれてしまったんです」(同)
その後、ヨシモト∞ホールは、何度かにわたりバトルシステムを変更。2021年4月に現在のシステムとなった。その結果、キングオブコント優勝の空気階段(現在はヨシモト∞ホールを卒業)、キングオブコント決勝進出の蛙亭、男性ブランコ、そいつどいつ、M-1グランプリ準優勝のオズワルド、同じくM-1グランプリ決勝進出者のゆにばーすなど、多くの芸人たちが結果を残している。
「賞レースの盛り上がりに呼応する形で、ヨシモト∞ホールの所属芸人たちの評価もどんどん高まり、“ネタの劇場”というイメージが定着してきた。そうなると“キャラもの”というイメージがある芸人は、割りを食う形になってしまう。ピスタチオもやはりそういった芸人であり、ネタではなかなか結果が出ず、解散となったのかもしれません」(同)
ちなみに、大阪吉本の若手芸人の劇場である「よしもと漫才劇場」もまた、“ネタ至上主義”の劇場として評価を高めている。M-1グランプリ優勝のミルクボーイ、M-1グランプリ&キングオブコント決勝進出者のロングコートダディ、キングオブコント決勝進出者のニッポンの社長などが所属だ。
「よしもと漫才劇場も、賞レースをかなり意識した劇場になってきています。基本的にネタが面白くないと出番が回ってこないシステムで、ネタでは結果を出さずに、バラエティー番組などでブレイクする芸人はレアケース。むしろ、意識的に一発屋を出さないような仕組みになっているとさえ言えるでしょう」(同)
若手劇場の“ネタ至上主義”になったことで、たしかに“実力派”が増えた側面もありそうだ。テレビで派手な活躍はしなくても、劇場で長く実直に活躍できる芸人が増えているともいえる。だがもちろん、かつての“一発屋”のようにテレビで大暴れする芸人への需要がゼロになったわけではない。
「芸人のネタが洗練されすぎて、完全にパターン化しているという指摘があるのも事実。たしかに“キャラもの”ばかりでは未来はなくなってしまうでしょうが、そういった芸人が劇場をかき回すことで、斬新なものが生まれるとも思います。芸人も多様性の時代。一発屋系の芸人が活躍できる場も、絶対に必要です」(同)
ピスタチオの解散は、現在の吉本若手芸人の事情を映し出したものだったといえそうだ。
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