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NHK朝ドラ『ちむどんどん』アナザーストーリー2

沖縄食文化を描く『ちむどんどん』の裏で… “食のアメリカ占領” で不健康県へ

沖縄の食卓を激変させたアメリカの食文化

 背景に米軍統治下の沖縄で徐々に沖縄の一般家庭の食卓に浸透していたアメリカの食文化の影響があるようだ。

 実際、沖縄に行くと、老舗の人気店「ジャッキーステーキハウス」を始めステーキ店が多い。飲んだ後の〆はステーキという人も多い。ファストフードも統治下の沖縄で本土に先駆けて入ってきた。

 米軍が持ち込んだ缶詰のポークランチョンミートは沖縄の一般家庭の食材として定着し、それを薄切りにして焼き、玉子焼きと食べる「ポーク玉子」は沖縄では定食屋の定番メニューだ。キャンベルスープといった味の濃いものも沖縄県民に好まれる。結果、脂の多いものが沖縄の食生活に定着し、脂肪の摂取量が極端に増えた。

 加えて、これまで沖縄の健康長寿を引っ張ってきた80~90代のお年寄りがどんどん死去している。この世代は幼少期より、緑黄色野菜、紅いも、大豆加工食品、鰹節、昆布をふんだんに使った伝統的な沖縄料理を食べ、しっかりと健康的な体の基礎を作ってきた。

 米国スタイルの食生活への移行と共に、県民の肥満が増え、健康の数値も悪化した。アルコール摂取量の増加も県民の健康悪化に拍車をかける。

 17年8月3日付「琉球新報」(デジタル版)の記事によると、沖縄はアルコールの多量摂取や肥満が原因となる「肝疾患」による死亡率が男女ともに全国で最も高い。飲酒は男性の場合、より深刻で飲酒量が全国の2倍に上る。

 糖尿病による死因は10年前より改善したが、それでも女性が全国ワースト1位、男性が同6位だった。

 毎朝、ドラマを見る限り、沖縄本島の北部のやんばる地域の山原村で暮らす暢子と家族たちの食卓にまでは、まだアメリカの食文化の影響は浸透していないようだ。伝統的な沖縄料理を食べる健康的な生活がまだ維持されている。

 実際のやんばる地域にある大宜味村(おおぎみそん)は93年(平成5年)、「長寿の村 日本一」を宣言した。「日本一長寿の村」の石碑も建てられ、観光スポットの一つになっている。ドラマの山原村も大宜味村をモデルにしているならば、暢子たちの健康的な食生活も当分の間は守られそうだ。

 ただ、竜星涼(りゅうせいりょう)演じるヒロイン暢子の兄の賢秀(けんしゅう)が定職にもつかず、酒ばかり飲んでいるのがちょっと気になる。このままのペースで飲み続ければ、後年の賢秀は間違いなく肝炎、肝硬変などの肝疾患を患う。

本田路晴(ジャーナリスト)

連邦海外腐敗行為防止法 (FCPA) に関する調査、ホワイトカラー犯罪の訴訟における証拠収集やアセットトレーシングなどの調査・分析を手掛ける米調査会社の日本代表を経て現在は独立系コンサルタント。新聞社特派員として1997年8月から2002年7月までカンボジア・プノンペンとインドネシア・ジャカルタに駐在。その後もラオス、シンガポール、ベトナムで暮らす。東南アジア滞在歴は足掛け10年。

ほんだみちはる

最終更新:2022/05/04 06:00
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