『マイスモールランド』ここ、日本で生きる17歳クルド人少女と「外国人」
#映画
日本人の私たちは、この国が外国人移民をどのように扱っているか、考えたこともなければ、見ようともしていない。インバウンドで経済効果が期待できる外国人旅行者だけは「おもてなし」の心が適応されてきたが、移民や難民の受け入れは悲惨な現状がある。
記憶に新しいのは、2021年3月6日に、名古屋入国管理局の施設で、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことだ。不法滞在状態によって収容されたことになっているが、どういった経緯で不法滞在扱いとなり、収容後もどう扱われていたのかなど、はっきりとした情報が開示されておらず、日本の入国管理の闇が隠蔽されているようにも感じられる。
滞在許可が下りる基準も不透明な部分があり、去年までは許可されていても、次の更新時には無効になる場合もある。帰る場所がない人や、母国が紛争地帯で帰国すると命の危険があるなど、さまざまな理由で意図せずに不法滞在扱いのまま日本で生活するしかない状況だった人々もいる。
それをひとくくりに不法扱いとして収容することにも問題がある。はっきり言って、線引きが機能していないとしか思えない。
茨城県牛久市にある出入国在留管理庁入国者収容所東日本入国管理センターの実態に迫った、ドキュメンタリー映画『牛久』(2021)も話題となった。「隠し撮り」に近い撮影手法が問題視される一方で、そこに映し出されていた悲惨な現状そのものは、紛れもない事実。
そして、2022年5月6日から公開される本作『マイスモールランド』を観てしまうと、日本が“安全で親切な国”というイメージは砕け散ってしまうだろう。日本人として、感情を持った人間として、この現状を受け止めて、変えていかなければならない……。
【ストーリー】
クルド人の家族とともに、生まれた地を離れ、幼い頃から日本で育った17歳の少女サーリャ。少し前までは同世代の日本人と変わらない、ごくふつうの高校生活を送っていた。だが、ある日、難民申請が不認定となり、家族の日常が一変する。埼玉に住むサーリャは、在留資格を失った今、アルバイトをして、大学に進学し、東京にいる友人と自由に会うことさえ許されない。日本に居たい、と彼女が望むことは“罪”なのだろうか……。
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