『不都合な理想の夫婦』他、今こそ観たい夫婦崩壊もの映画3選
#映画 #不都合な理想の夫婦
新型コロナウイルスの流行が始まった当初、「コロナ離婚」の急増が話題になったことがある。夫婦がずっと同じ空間にいることによりお互いにストレスが蓄積したり、環境や経済面での変化も手伝って、険悪なムードになってしまうことも少なくはなかったようだ。
コロナ禍が始まって2年が過ぎ、その環境が当たり前になった今では、夫婦の付き合い方に新たな心得ができた、穏やかに過ごせているという方もいるだろう。だが、油断は禁物かもしれない……ということを教えてくれる映画がある。
ここでは、4月29日より劇場公開されている『不都合な理想の夫婦』と、さらにおすすめの「夫婦崩壊もの映画」を3本紹介しよう。いずれも「もはやホラー」な恐ろしさがあるので、覚悟の上で観ていただきたい。
『不都合な理想の夫婦』:旧態依然とした価値観の恐ろしさ
『不都合な理想の夫婦』のあらすじはこうだ。ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリーは、アメリカ人の妻アリソンと息子と娘と共に幸せな家庭を築いていたが、さらなる大金を稼ぐ夢を追い、ロンドンへ家族とともに移住する。ローリーは初めこそ、郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、アリソンには広大な敷地内に馬小屋を建てることを約束するなど、資本主義の勝利者のように振る舞う。だが、ある日アリソンは新生活のための貯金が底を突いていることに気づき……。
本作のミソは、1986年という金融危機が起こる前の「リスク」や「野心」がもてはやされる時代の物語ということだろう。主人公は移住前からすでにアメリカン・ドリームの体現者のような成功を掴んでいたのに、当時の物質的な豊かさを追求する野望に満ちた価値観が、彼を最悪な方向へと突き動かしてしまったのだ。
さらに、「家族の未来は全て夫(父親)次第」という行き過ぎた家父長制や男性権威主義的な価値観も見て取れるし、主人公が虚栄心に満ちた「中身がない」人物であることもパーティでの会話などから容赦なく描かれていく。単なる経済的な理由「以外」でも、夫婦及び家族の関係が崩壊していくのだ。
当時の好景気に湧く社会ならではの価値観は旧態依然としたものに映るかもしれないが、コロナ禍で新たなビジネスが生まれ、それで成功する者も、失敗する者もいる、はたまたコロナ禍のために住む場所を変える人もいる今では、むしろ一周回ってタイムリーに感じられるのではないか。「結婚する時、長所も短所も受け入れたのに、いつの間にか相手に完璧を求めるようになる。だから離婚が多い。期待しすぎだ。」という劇中の諫言が耳に痛いという方もいるだろう。
そして、劇中でもっとも虚しく悲しいのは、主人公が疎遠だった母親のもとに訪れるシーンだろう。その時に彼が見せた「写真」および言動には、「ある重要な人物」が排除されており、そこでも「良いものだけを見せたい」浅ましさがありありとわかるのだ。愚かしく独善的なその内面を表現しきった、ジュード・ロウの熱演もぜひ見届けてほしい。
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