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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 東京藝大合格者が“教科書”にしたのはあのマンガ

『家つい』東京藝大に合格した彼女が“教科書”にしたあのマンガ「まさか受かるとは思ってなかった」

『刃牙』を読んだら、東京藝大に受かった?

 夜の下北沢駅前。スタッフが「インタビューに答えていただくと…何かイイことあるかも!?」というプラカードを掲げていると、5人組の男女が話しかけてきた。全員20歳で、高校時代の同級生の集まりだそうだ。

 その中の1人の女性は、現役の美大生だった。「家、ついて行ってイイですか?」と尋ねると、彼女は快諾してくれた。

 というわけで、梅ヶ丘にあるという彼女の実家へお邪魔することに。道中、スタッフは彼女にインタビューした。なんと、この人が通っているのは東京藝術大学である。日本で唯一の国立総合芸術大学だ。

女性 「私立の大学、全部落ちちゃったから(苦笑)」
――他はどこ受けたんですか?
女性 「女子美術大学と東京造形大学と多摩美術大学」

 それらに落ちたのに、東京藝大に受かっているのが驚きである。そんなこんなで、彼女の家へ到着。実家が梅ヶ丘という時点で裕福とは思っていたが、想像以上だった。大きな一戸建てなのだ。

 家に入ると、内観も予想外だ。玄関を開けると彼女の描いた絵が飾ってあり、それは“おっぱいを殴る絵”だった。その横には自画像が飾ってあったが、描かれた彼女にはなぜかおっぱいが3つある。不思議な絵だし、夢に出てきそうな怖さだ。画風は、野性爆弾のくっきー! っぽいか?

 リビングに上がると、他にも絵がたくさんあった。殴られた人が他の人を殴り……がぐるぐる連鎖していく“連鎖的に殴ってく絵”。よく見ると全員全裸で、やはりぶらぶら揺れるおっぱいが印象的だ。どの絵にも絶えずおっぱいが入っている。ただ、エロが好きというより芸術脳なのだろう。あと、暴力的なテーマも彼女の好みだ。

「大好きなんで、バイオレンス(笑)」

 東京藝大は2次試験が油絵だった。1,000人受験する中で、受かるのはたった55人である。

「普通の絵じゃ受からないかなあと思ってたので、どっか目立ったり突出したりしないと」

 彼女の部屋にお邪魔すると、やはり独特なのだ。壁じゅうにたくさんの絵が貼ってあるし、寺山修司のポスターも貼ってあった。ちなみに、絵を描き始めたきっかけは「漫画が好きだった」から。漫画の話をする人が欲しくて、中学時代に美術部へ入ったそうだ。

 ふと部屋の一角を、やはりバイオレンスな絵が飾ってあった。人の殴られている絵である。ストレートパンチの拳が人の顔面にめり込んでいる描写だ。PANTERA『Vulgar Display of Power』のジャケットを彷彿とさせる、と言ったらわかりやすいか?

「ブン殴られてる絵ですね。『刃牙』っていうマンガが好きで。結構、影響を受けてて」

 地上最強の父親を倒すため、息子の刃牙が世界中の格闘家と闘って強くなる名作である。主人公・範馬刃牙のモデルは、総合格闘家の平直行。『刃牙』のあるページを開くと、彼女が描いた“ブン殴られてる絵”とそっくりな絵があった。

「こういう感じで、着想を得て自分なりに描くみたいな。私はマンガが大好きなので、すごい参考にしてて」

 モチーフはPANTERAじゃなくて、『刃牙』だったのか! それにしても、『刃牙』を参考にして藝大に入った人は初めて聞いた。それどころじゃない。彼女は、『刃牙』との出会いで人生が変わったらしい。私立の美大を受けるも、連戦連敗。もし浪人したら、予備校の夏期講習だけで20~30万円の費用がかかってしまう。だから、親に負担をかけさせないため、一時は就職も考えていた。そのタイミングで彼女は偶然にも『刃牙』に出会った。

「超面白くて、本当に……! 『刃牙』の殴ってる絵とかを模写してたら、結構楽しくて。で、『刃牙』を参考にさせてもらって」

『刃牙』との出会いで、変わった彼女。そのビフォアアフターは、絵を見れば一目瞭然だ。殴った拳のめり込み方に力強さが出たし、殴られている側の表情は目が歪んだりシワが増えたり、“痛み”が伝わるようになった。『刃牙』の影響を受けた画風で、彼女は東京藝術大学に合格した。

「ビックリして泣いちゃって、まさか受かるとは思ってなかったんで(笑)。『刃牙』はもう、教科書ですね」

 武蔵美や多摩美に落ち、『刃牙』を読んだら東京藝大に受かったのだから、彼女はまさに『刃牙』で人生が変わった。『刃牙』は確かに読者の人生を変えるマンガである。

「受験受かったのは『刃牙』のおかげみたいな感じなので、先生(作者の板垣恵介)に手紙を出したいとずっと思ってて(笑)。『ありがとうございます』って本当に言いたくて。感謝を伝えるしかないですよ」

『刃牙』で藝大に合格できたなんて、板垣先生が聞いたら喜びそうだ。『刃牙』って教科書なのか! 何が自分の教科書となり、何で人生が変わるかはわからないものだ。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/04/27 21:00
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