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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > フワちゃん浅草ロケのフィクションと“お約束”

『ここにタイトルを入力』フワちゃん浅草ロケのフィクションと“お約束”

おぼん「(解散を)心のなかで止めてくれたんがね…」

 17日の『桂文枝の演芸図鑑』(NHK総合)。トークゲストとしておぼん・こぼんが出演していた。ホスト役の桂文枝を前に、2人は「仲直りしたのは民放のテレビ番組なんですよ」(おぼん)と、昨年の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)での一件を振り返る。

 さらに、おぼんによると、過去最悪に仲が悪かった自分たちの解散を止めてくれたのは、10年ほど前に亡くなったある人物からの言葉だったという。

「(解散を)心のなかで止めてくれたんがね、小野ヤスシさんなんですよ。小野さんが亡くなる1カ月ぐらい前かな。『絶対コンビは別れたらいかん。別れたらそれで終わりや』。あの番組(=『水曜日のダウンタウン』)のときも、別れようと思ったんですけども、小野さんもああ言ってくれてはるし、別れたらやっぱり終わりやなと」

 そんなトークなのだけれど、とにかくおぼんがしゃべる。こぼんが何か口を挟もうとしても、それを意に介さずしゃべり続けるおぼん。「漫才中に目があうようになったんですよ」と言いながら、トーク中はその目をほとんどこぼんのほうに向けないおぼん。なんだか鮮度が落ちない不穏。

 おぼん・こぼん、どこまで意識的にコントロールしているのかはわからないのだけれど、ずっと不穏をうかがわせるラインを維持し続けるという不思議な芸を見せている。押すなよ押すなよ、って誘ってるように見えるのは錯覚か。

「この番組はフィクションです」

 18日の『ここにタイトルを入力』(フジテレビ系)。レギュラー放送となって1回目の放送で、ダブルブッキングになってしまった小峠英二(バイきんぐ)の窮地を、2つの番組に同時出演させることで解決した(という設定でお送りされた)同番組だが、2回目の放送もまた面白かった。なお、ここから先の文章には、随所に「(という設定)」というカッコ書きがあると思って呼んでいただきたい。

 この日お送りされたのはフワちゃんの浅草ロケ。しかし、スタッフはそのロケ映像のデータをすべて紛失してしまったのだという。驚くフワちゃん。しかし、スタッフは「がんばってなんとかしたので放送はする」という。

 で、放送された映像は、監視カメラの映像、YouTuberのロケ動画、通行人によるスマホの映像、訪れた飲食店に置かれたカメラ型の体温計の映像、喫茶店でZOOM会議をしている人の映像、マジックミラー号の内部映像など。フワちゃんがロケをした経路にあった無数のカメラの映像をつなぎあわせるなどすることで、消失したロケ映像が再現されていた。

 途中、美川憲一がロケに参加する場面では、黒服&サングラスのボディガードみたいな人たちが映り込むシーンが。そんな皮肉も細かく随所に織り込まれている。

いや、番組全体が、ネットなどの資料をつなぎあわせればそれっぽいものができてしまう状況への皮肉なのかもしれない。あるいは、ネットなどの資料をつなぎあわせてそれっぽいものをつくるのならこれぐらい手の込んだものをつくってみればいかがか、みたいな。

 で、この番組、前回もそうだが「この番組はフィクションです」といったテロップが最後までまったく出ない。視聴者のリテラシーを信用しているということだろうか。なんだかその信用にはお応えしたい感じがするし、「私はこの番組のことをわかってる」って思いたい選民意識をくすぐられてる感じもする。

あるいは、お約束のうえで出演者がパフォーマンスしているという点では他の番組と同じです、他の番組がわざわざフィクションと名乗らないのであればこの番組もフィクションではありません、お約束が少しちがうだけです、ってことかもしれない。

 もしくは、番組では答えあわせをしないけれど、放送後にネットでは答えあわせがあふれますのでそちらの別紙をご参照のほど、ということだろうか。ネットなどの情報をつなぎあわせてつくられたこの番組は、放送後にあふれるネット上の情報をさらにつなぎあわせることでより楽しめます、みたいな。

そしてテレビの情報をつなぎあわせてつくられたこの記事もまた、ネットにあふれる無数の答えあわせのなかに紛れていくのである。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2022/04/27 11:00
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