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韓国アイドルの推し活カルチャーが苦境に立つ飲食業に貢献―変化するファンビジネス

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 韓国のK-POPアイドルファンの“推し活カルチャー”に変化が起きているようだ。最近、話題やトレンドとなっているのは「バースデーカフェ」という形態の推し活だ。

 これまで韓国では誕生日を迎えるアイドルがいると、ファンたちがお金を出し合いプレゼントするという慣習がメインストリームだった。この推し活カルチャーはその昔、皇帝に対して周辺諸国が貢物をした行為になぞらえて、「朝貢」という名称で呼ばれている。ファンたちが駅や電車、ビルやモニュメントに巨大な祝賀広告を出す行為もこの“朝貢”のひとつである。

 一方最近、韓国のファンの間で流行しているのが、カフェなどスペースと提携したイベント型推し活である。貸し切り、もしくはタイアップしたカフェを、アイドルの写真やグッズ、また手作りインテリアを装飾し、ファン同士で集まって祝うというものだ。もちろんだが、アイドル本人はその場にはいない。まるで、故人を偲ぶ韓国の催事である祭祀(チェサ)のようにアイドルの誕生日を粛々と祝うのである。

 日本にもアイドルの誕生日を自分たちだけで祝う推し活はある。しかし、韓国のバースデーカフェが独特なのは、カフェ側もそのパーティーの裏方としてしっかり役割を果たしているという点だ。

 例えば、カフェでは誕生日期間中に、アイドルの名前や愛称とコラボさせた限定商品などを売り出すことも珍しくない。ファンとカフェが交渉し、一緒にバースデーカフェを盛り上げているのだ。最近では、カフェだけではなく、映画館や焼き肉屋などでもバースデーパーティーが行われているという。

 日本と同様、韓国でも映画館や飲食店はコロナ禍で客足が激減したがある意味、バースデーカフェはそんな苦境に立たされた人々の一助になる経済行為・カルチャーという一面も持ち合わせている。

 なおバースデーカフェには、「貸与方式」と「飲食方式」があるという。前者は完全に店舗を貸切るパターン、後者は店舗料を取らず販売された飲食品の売り上げを収益とするものである。そのうち、集客力が高いファンコミュティとつながりが深い個人には、カフェや飲食店側からイベント誘致の誘いがあるかもしれない。

 ファンたちのブログをみるに、バースデーカフェの準備期間は数週間から1カ月ほどかかる模様だ。結婚式とまで行かないものの、なかなかの気合の入り様である。

 なおバースデーカフェは、ファン同士の交流の場としても機能している。例えば、普段はオンラインでしか知らないファンクラブのメンバーたちと、バースデーカフェで初めて顔を合わせるというケースも少なくないそうだ。またひとりでカフェにやってきて、他のファンと交流するということも多々あるという。祭壇にアイドルを祀った一種のオフ会というイメージだろうか。

 韓国社会では、バースデーカフェはファン個々人の趣味というレベルを超えて、ひとつの社会現象として捉えられ始めている。強い組織力を持ち、社会を巻き込んだ経済効果を生み出す韓国アイドルの推し活カルチャーの変遷は、文化論としても面白いテーマとなりそうだ。

与良天悟(芸能ライター)

1984年、千葉県出身のウェブメディア編集者。某カルチャー系メディアで音楽や演劇を中心にインタビューなどを担当するほか、フリーで地元千葉県の企業の記事なども請け負っている。

よらてんご

最終更新:2022/04/26 07:00
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