新型コロナ禍で荒れるインターネット…法務省、人権侵犯が増加と発表
#インターネット #人権侵犯事件
法務省は3月22日、「令和3年(21年)における人権侵犯事件の状況」を発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、新規救済手続きを開始した件数、処理件数は減少したものの、インターネット上での人権侵犯件数は増加した。
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00108.html
発表によると2021年度に新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は8581件と前年比1008件(10.5%)減少した。17年以降、4年連続の減少となった。
12年に約2万3000件だった新規救済手続開始件数は、16年には2万件を、20年には1万件を割り込み、順調に減少してきた。(表1)
ただ、法務省では21年の動向について、「長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、人と人との接触の機会が減少していることに加え、事件の端緒となる人権相談に関し、対面型の人権啓発活動を通じた相談窓口の周知を十分に行うことが 困難であったことが考えられる」としている。
新規救済手続開始件数と同様に、処理した人権侵犯事件の数も8462件と前年比1540件(15.4%)減少した。
新規救済手続き開始事件の内訳では、プライバシー侵害1621件(18.9%)、労働権関係1318件(15.4%)、学校でのいじめ1169件(13.6%)、暴行・虐待1133件(13.2%)で半数以上を占めている。(表2)
新規救済手続開始件数が減少する中で、インターネット上での新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は1736件と前年比43件(2.5%)増加した。
インターネットの人権侵犯事件に対する新規救済手続開始件数は12年の671件から年々増加し、14年に1000件を突破、17年には2000件を突破し、2217件とピークを付けた。その後は、2000件以下で推移しているものの、高止まりが続いている。(表3)
インターネットの人権侵犯事件の内訳としては、プライバシー侵害が725件、名誉棄損が483件となって両者のおり、事件だけで全体の86.7%を占めている。
インターネット上の人権侵犯事件の処理件数は1588件と前年比329件(17.2%)減少した。
事件の処理は、被害者に対しインターネット上の人権侵害情報を被害者自らが削除依頼する方法を教示するなどの「援助」が半数近くを占めるが、人権擁護機関が違法性を判断した上で、プロバイダ等に対し人権侵害情報の削除を求める「要請」を行った件数は399件と前年比179件(31.0%)減少した。
具体的な事案としては、インターネット上のブログサイトに知人が撮影したと思われる被害者自身の顔画像が無断で掲載され、法務局が調査した結果、掲載を被害者は承諾していない上、「被害者は犯罪者である。」などとして被害者を誹謗中傷する記事が掲載されていたことから、当該記事は、被害者の肖像権を侵害し、名誉を毀損するものであると認められたケースがあった。
また、SNS上では、複数のアカウント上に被害者やその子の氏名など、被害者を特定し得る情報とともに、被害者が不倫をしているなどの被害者を誹謗中傷する投稿が多数なされていたことから、投稿は被害者のプライバシーを侵害するとともに、名誉を毀損するものであると認められたケースもあった。
特徴的な事案としては、新型コロナウイルス関連がある。新規救済手続開始事件のうち新型コロナに関する人権侵犯事件数は232件と前年比57件(32.6%)増加した。このうち差別待遇事案が81件と全体の34.9%を占め、次いで労働権関係事案が70件、強制・強要事案が25件となっている。処理件数は256件だった。
具体的な事案としては、保育園に通う園児兄弟がPCR検査の結果が陰性であったにもかかわらず、保育園から登園を拒否されたケースや、新型コロナに感染していないにも関わらず、感染したと知人らに流言されたケースなどがあった。
新型コロナは人権侵犯事件の新規救済手続き減少の一因になるとともに、新型コロナ関連の人権侵犯事件を発生させるなどの影響も与えている。
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