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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > なぜ『魔女の宅急便』は胸にしみるのか?
アレのどこが面白いの? ~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~

『魔女の宅急便』は「上京あるある」 心細さ切なさ満載で何度も見てもいい

なぜ『魔女の宅急便』は胸にしみるのか? 心細さ切なさ満載「上京あるある」の画像1
日本テレビ『金曜ロードショー』公式サイトより

 放送作家の深田憲作です。

「企画倉庫」というウェブサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。

 今回のテーマは『魔女の宅急便』です。

 ……今、この原稿を読みながら心の中でツッコミを入れた方もいるでしょう。「お前、正気か?」と。「あのレジェンド映画を今ごろ評論かよ」と。

 1989年に映画が公開されて以来、数多の映画評論家が評論・分析・考察をしてきた不朽の名作を、2022年にネタとして取り上げることは、私としても恐怖と迷いがありました。

 プロ・アマ問わず、私の知らないところでこの作品についてはもう語ることがないくらいに語りつくされているはず。私が今さら何を言おうとも読者のみなさんに新たな見識は与えられないかもしれません。

 しかし近々、日テレ系『金曜ロードショー』で『魔女の宅急便』『耳をすませば』が2週連続放送され、さらには『耳をすませば』が実写映画化されるというニュースを知り、ジブリ愛が沸騰してきたため、「これは一応、時事ネタと言えるのではないか?」と自分に言い聞かせて書くことにしました。前置きが長くてすみません。

 何度地上波で放送しようとも、そのたびに高視聴率を叩き出すジブリ作品。その中でも屈指の名作『魔女の宅急便』。初めて見たのがいつかも覚えていない、何度見たかも分からないこの映画を、エンタメの仕事に関わって15年、38歳の自分が改めて見たら、何を感じ・何を分析できるのかをやってみました。

トンボに冷たくしちゃう自分に自己嫌悪するキキ

 この映画は一体どこが面白いのか? 改めて映画を見た私の率直な感想は……「“分かるわ~”の連続」でした。何が「分かる」かというと、上京を経験している人間からすると「上京あるある」の連続なんです。(ちなみに私は広島出身です)あの話って要は「上京物語」なんですよね。これは10代の頃の自分は気付かなかった、上京してゼロから人間関係と仕事を作り上げた今だからこそ、強く感じられたことです。

 中でも1番「分かるわ~」だったのは、当初はキキが嫌悪感を抱いていた男の子・トンボと特製自転車を2人乗りして海に行き、ようやく打ち解けたかと思った矢先、トンボの仲良しグループが偶然通りかかって声をかけてきたことで急にキキがトンボに対して冷たくなって帰ってしまう場面。これ、めちゃくちゃ分かるなと思いました。

 慣れない土地で仲良くなった人が、ちょっとチャラく見える他の友人と一緒にいるところを目撃すると、なぜだかイヤ~な気持ちになっちゃうんですよね。疎外感というか劣等感というか、なんとも言えないイヤな気持ちです。これは共感できる人もそれなりにいるのではないでしょうか。なぜあんな気持ちになるのかは、いまだに私も理解できていません。キキもトンボに冷たくして帰った後に「せっかく友だちが出来たのに急に、憎らしくなっちゃう」と、自分でも理由が分からずに自己嫌悪に陥っていました。

 他に「分かるわ~ポイント」だったのは、キキが風邪をひいて「私このまま死ぬのかしら」と悲観的な言葉を吐いて、お世話になっているパン屋のおばさんに笑われる場面。他人から見たら笑いごとですが、上京して生活がうまくいかない時って、ちょっとしたことで絶望してしまうのもあるあるです。私は上京したての頃に、家で水筒のお茶をじゅうたんにぶちまけて、膝から崩れ落ちて本気で泣きそうになった経験があります。上京直後というのはそれくらいナイーブなんです(笑)。

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