小峠英二、有吉弘行…テレビに映す顔のカオスすぎる“分裂”と“縫合”
#テレビ日記
水卜麻美「こんなに挫折した1年ない」
そんな複数の顔の縫合が、なかなかうまくいかないこともあるだろう。
この4月からレギュラー放送ではじまった『午前0時の森』(日本テレビ系)。月曜は村上信五(関ジャニ∞)と劇団ひとり、火曜は若林正恭(オードリー)と水卜麻美アナウンサーがMCでお届けする、トーク中心のバラエティ番組だ。
その12日の放送での若林と水卜アナのトーク。水卜アナが入社1年目のときから番組で共演していたという若林は、彼女のことを「テレビ同期だと思っている」らしい。水卜のほうも、新しい番組がはじまるなどした際は若林に相談をしていたりするそうだ。そんな2人の間柄だからだろうか。ソファーに座る水卜は、足を崩したり、ブラブラさせたり。自由に動く足が、心理的にリラックスしている様子を感じさせる。
そんな水卜は語る。
「こんなに挫折した1年ない」
2021年4月から『ZIP!』(日本テレビ系)の総合司会を務めている彼女。挫折は、そんな『ZIP!』での自分の振る舞いかたにあるらしい。
「朝の人はどんなこと聞きたいんだろうとかが、だんだん考えれば考えるほどわかんなくなってきて。朝見てるお子さんに有害ではない、教育的にすばらしい、ためになる、で、いい大人でいなきゃいけない、でも楽しんでもらいたい、でもそんな人間でもない。なんかいろんなこと考えたら、しゃべれなくなっちゃって」
これまでバラエティ寄りの仕事が多かったためというのもあるのだろうか。朝の情報番組の総合司会としてあるべき顔の調整がうまくいかない。そんな悩みを若林の前で吐露する水卜だった。
他方、顔の縫合スキルが評価されるパターンもある。
12日の『有吉クイズ』(テレビ朝日系)。こちらでは、有吉弘行が蛭子能収に会うVTRが放送されていた。認知症のためテレビでその姿をあまり見なくなった蛭子。そんな蛭子と有吉が会ってトークする企画は、同番組で半年ほど前にも放送されていた。その回は評判を呼び、良質な番組に与えられるギャラクシー賞の月間賞を受賞した。有吉もこの件に触れる。
「ハートフルすぎて、ギャラクシー賞を受賞するという」
で、今回の蛭子との再会。2人は庭園を散歩したり、縁側に座って話したり。似顔絵を描きあうシーンもあった。VTRの最後、また半年後の再会をおたがいに約束すると、有吉が「なるべく体調崩さないように」とひと言。勝手ながら、再会の約束が蛭子やその周囲にとっていい方向につながることを願ってしまうし、有吉の蛭子への言葉がけに優しさを感じてしまう。VTRは、2人の毒っ気のある言動を交えながらも、全体的にはほっこりする感じで終わったのだった。
映像を見ていたスタジオの面々も2人のやり取りを高評価。たとえば、霜降り明星のせいやは「めっちゃよかったっすね。ギャラクシー賞、またあるんじゃないですか?」などと持ち上げる。しかし、有吉はそんな評価を台無しにするようなことをすぐさま言って、笑いに変えるのだった。
「蛭子さんの笑顔を引きだす俺の人柄もいいじゃない」
自分が“いい人”になりそうになると、それを自分で台無しにする。有吉にはそういった場面がたびたびある。いわゆる“毒舌”の顔と“いい人”の顔。自分の顔が分裂しそうになったときに、それを“毒舌”寄りに引き戻して縫合する手際のよさ。上述のせいやの過剰にも思える持ち上げも、このあとの有吉のコメントを引きだすものだったかもしれない。
有吉がしばしば見せる台無しコメントは、世評があまり高くなりすぎないように、ということなのだろう。だが、そんな自分で自分の評価を引き下げる手際のよさが、結局は「評価を高めすぎないのがすごい」というかたちで高い評価につながっていく。評価が高いと何かのきっかけで引きずり下ろされる時代にあって、タレントが高い評価を維持する数少ない迂回路。うまいなぁ。そう思ったときには、もう彼の手のひらの上なのだ。
そう考えると水卜アナも、“迂回路”を通っているのかもしれない。「朝の情報番組が夢だったっていうのもあって。夢にいざストンって来てみたら、私はここで何を出せばいいんだろうっていうのが、なんかもうわかんなくなって」と語る水卜。そんな彼女に若林はツッコんだ。
「それはもう、みんな『そんなことないよ』って言うだろうし、言わせてんだろうなって思うけどね」
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