知性があってもたいした仕事に就けない『パリ13区』の若者と、近くて遠い日本の若者
#稲田豊史 #さよならシネマ
翻って、日本では
コミュニケーションとしてのカジュアルなセックス、それをもって獲得される、愛で満たされた「寛容と他者の尊重」。高原化した社会の理想がここにある。ぜひ我が国もご相伴にあずかりたい……ところだが、いかんせん日本はフランスほどセックスがカジュアルでも日常的でもない。
古いデータなのであくまで参考だが、英コンドームメーカーDurex社が2005年に行った各国別セックス頻度調査によると、フランス人の性行為が年間120回なのに対して、日本人は45回だった。また、13年に日本のコンドームメーカー相模ゴム工業が行った調査によると、20~60代日本人の平均セックス回数は月に「2.1回」。年間ではたったの25回だ。もっとも頻度の高い20代(4.11回/月)ですら、年間50回に届かない。
そんなセックス不得手な我が国のミレニアル世代の多くが、いったい何で小確幸を獲得しているのかといえば、おそらくはマイルドヤンキー的な文脈での「地元でつるむ友達」と、日高屋的なサードプレイスだろう。そこに行けば確実に、同じ価値観の仲間や同じ味が待っている。確実に満たされる。
このような日本流の小確幸をもし映画にするならば、タイトルは『パリ13区』にならって関東の地名の……いや、どこを書いても語弊があるのでやめておく。
『パリ13区』
公開日:4月22日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開
2021年/フランス/仏語・中国語/105分/モノクロ・カラー/4K 1.85ビスタ/5.1ch/原題Les Olympiades 英題:Paris, 13th District/日本語字幕:丸山垂穂/R18+
©PAGE 114 – France 2 Cinéma
提供:松竹、ロングライド 配給:ロングライド
監督:ジャック・オディアール 『君と歩く世界』『ディーパンの闘い』『ゴールデン・リバー』
脚本:ジャック・オディアール、セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』、レア・ミシウス
出演:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン『燃ゆる女の肖像』、ジェニー・ベス
原作:「アンバー・スウィート」「キリング・アンド・ダイング」「バカンスはハワイへ」エイドリアン・トミネ著(『キリング・アンド・ダイング』『サマーブロンド』収録:国書刊行会 刊)
©PAGE 114 – France 2 Cinéma
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