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日刊サイゾー トップ > 社会  > アフリカ系外国人から届く動画孕む差別

アフリカ系外国人から「おめでとう」が届く…バズりまくる“サプライズ動画”が抱える差別問題

いいことをしたつもりが差別に加担…そこからどう脱却するか

 そして、現在「世界からのサプライズ動画」が日本で多くの人々に好感を持って受け入れられているのは、悲しいことに揺るぎない事実だ。我々日本人がどういう視点でこれを「面白い」と感じるのかと省みると、そこにはいわゆる「名誉白人」のような意識が内在しているのではないだろうかと、思えてならない。安全圏にいるつもりの我々も、日本から一歩出れば、アジア系への差別心からくる暴力(ヘイトクライム)に巻き込まれる可能性も少なくはないはずなのに。

 取材を進めている期間の中でも、筆者のツイッターのタイムラインでは「世界からのサプライズ動画」の動画がいくつもリツイートされてきた。中には、筆者の友人たちが自ら依頼した動画もあった。ここでそれを個別に非難するつもりはない。彼ら彼女たちだって、普段接している上では真面目で常識のある人だ。では、どうして“常識のある人”が、この動画を楽しめてしまうことが起きるのだろうか。

「こういったサービスをすぐに差別だと感じないのは、一般的な感覚です。多くの人は、自分たちは差別をしていないと思っているし、『差別は良くない』という一般常識を持っている。ですが、一般常識とは全然違うレベルで考えないといけないんです。ほとんどの場合、差別は悪意ではなく、無自覚なところから生まれています。だからこそ、『とにかくダメだからやめましょう』ではなく、何が問題なのかを考える必要があります」(中村氏)

 今回の場合でいえば、わかりやすくレッテル貼りされた外国人のイメージを消費することは差別的だ、というのがひとまずの結論になる。しかし外国の文化や食事だったり人物だったり、自分と違う他者に面白さを感じたり、憧れを持つことは誰しもあるはずだ。

「いわゆる異国趣味、エキゾチシズムといわれるような憧れの感覚は、それ自体が差別意識の反転ではあります。憧れそのものはむげに否定されるものではなく、異文化に対する関心の入り口として大切なもの。ですが、その入り口にとどまり続けて、多数派の価値観の中でエキゾチックなものをそう捉え続ける限り、優越意識からは逃れられず単に他者を消費するだけの振る舞いになってしまいます」(同)

「面白い」「(支援になるから)いいことをした」と感じた人たちに悪意があったわけではない。むしろポジティブな感情からスタートしているはずだ。だが、結果的に差別的な振る舞いをしていたり、それに加担することになっている。そこから脱却するには、どうしたらよいのだろうか?

「一番大事なのは『差別するとはどういうことか』を知ることだと思います。気づいていないけれど差別をしているとはどういうことなのか。差別感情がエスカレートした先に、集団でのいじめや暴行、もっと規模が大きくなればジェノサイドが起こり得るわけです。ですから差別が明確な形を帯びる前に、見えない差別に気づくことが大事です。見えない差別は私たちの身の回りに偏在しています。普段生活する上で“弱者”が見えにくくなっているし、そういうことに気づかなくていい社会構造になっていると思います。お金を介するサービスの中で消費者は無色透明の主体になっていて、もちろんそれはプラスの面もあります。でもだからこそ差別的なサービスに対して『お金を払ってるんだからいいじゃないか』と屈託なく言えるようにもなってしまう。

“考えること”自体が贅沢なことなんです。世界には、“生きているだけで精一杯”という境遇にいる人も少なくない。難しいことを自分なりに受け止めるだけの心の余裕を持って、贅沢なものを他者のために使っていきたいですよね」(同)

(編集:斎藤岬)

藤谷千明(ライター)

1981年生。V系好きのフリーライター。他にはギャル文化、ヤンキー文化、YouTuberなどが好き。共著に『すべての道はV系に通ず』など。

Twitter:@fjtn_c

ふじたにちあき

最終更新:2022/04/10 09:01
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