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日刊サイゾー トップ > 社会  > アフリカ系外国人から届く動画孕む差別

アフリカ系外国人から「おめでとう」が届く…バズりまくる“サプライズ動画”が抱える差別問題

類似サービスは5年も前に中国で炎上していた

 それでも、出演者たちの生活を支援する慈善事業としての意義があるという見方もあるかもしれない。だが、実はこの点に関しても疑念は残る。

 5年前、「世界からのサプライズ動画」の類似サービスが中国で炎上している。ジャーナリスト安田峰俊氏が「文春オンライン」に寄稿した記事によれば、2017年夏、中国のIT大手アリババ社が運営するネットショッピングモール・タオバオで、アフリカの子どもに中国語のメッセージボードを持たせた写真や動画が販売されていることが問題視された。

 その後、中国共産主義青年団北京市委員会の機関紙「北京青年報」の取材により、動画出演者にろくな報酬が支払われていないことも明らかになった。この件はアフリカのニュースメディア「アフリカ・タイムス」やBBCでも報じられ、アリババはサイト上からこのサービスを削除する処置をとったという。

※出典:2017年9月12日「文春オンライン」掲載「アフリカを飲み込みつつある中国人のエゲツない『黒人差別』意識」
https://bunshun.jp/articles/-/4004?page=2

「世界からのサプライズ動画」が『スッキリ!』(日本テレビ)で取り上げられた際、WORLDSMILEの代表は「もともと中国で生まれたサービスに感銘を受けて日本でも同様の事業を行うことにした」という旨のコメントをしている。中国で問題視された経緯を知っていたかどうかは不明だが、いずれにせよ支援をうたうのであれば、そのフローは透明度を高くするべきだろう。

 安田氏によれば、現在でもタオバオ上で類似ビジネスはいまだに行われているそうだ。

「最近はアフリカ系ではなく、ウクライナの女性によるメッセージ動画が主流になっているようです(2月上旬時点)。5年前に炎上して問題になったことで一瞬は引っ込めたものの、大半の人は悪いことだとは考えていないのでしょう。実際に動画を贈り合っていた人々の間では問題になっていないと思いますよ」(安田氏)

 コロナ禍前は頻繁に中国に足を運んでいた安田氏は、肌で感じる中国とアフリカの独特な距離感についてこう説明する。

「中国発のこのサービスは大変差別的です。ですが、アフリカの人々からすれば中国よりも欧米、西側諸国への悪感情のほうが大きいんです。自分たちが住んでいる場所に勝手に線を引いて国境をつくって支配した上に、現在でも国内が政治的にガタガタしたら上から偉そうに干渉してくる……少なくともアフリカ側はそう解釈していることが多いように感じます。一方で中国は、毛沢東時代以来から反帝国主義を掲げていて、現在の習近平政権もその顔を強調している。これはアフリカ諸国から好感を持たれている一因です。中国とアフリカには地理的に距離があり、経済進出は行っても政治的な介入はしてこないため、欧米に比べると好感を持ちやすいという面はあると思います」(同)

 自分たちとは異なる他者、今回の場合でいうと外国人を面白がるのは差別的だとする感覚は、人権を重視する思想に基づいている。人権を重視するのは、欧米に端を発する近代市民社会の原理のひとつだ。だがアフリカ諸国に対する差別心は過去の欧米の植民地政策等と深く関わっており、一筋縄ではいかない問題であることがうかがえる。

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