平成ノブシコブシ徳井健太が考える「正解なき」芸人道―東野幸治でさえ敗北した道
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「吉村は意外と使える/徳井は奇人だから使えない」時期
ーー私はノブコブさんが出てた『土曜プレミアム(株)世界衝撃映像社』の部族のロケが大好きで。面白いと同時に恐怖も感じていました。なんでも食べるしどこでも行っちゃうし「躊躇」という言葉を、徳井さんは知らないんじゃないかと。ものすごい芸人さんだと思いました。
徳井:当時は面白いと思われることが一番だったので、何でもやってましたね。死ぬよりも生きるよりも面白いと思われたい。面白いと思われて死ぬなら本望とさえ思ってました。「まぁ、死んだか」くらいな気持ちになれるというか。あの頃はできるだけ人と逆のことをしたい、逆張りしようと思ってました。
ーーあのロケから仕事の方向性は変わりましたか?
徳井:あの時期がいわゆる第二ゾーンで、自分=奇人だと思い込んでて、どんな番組に出ても奇人としての自分を求められていると思っていました。クイズ番組に呼ばれても奇人の振る舞いをして答えるんですが、二度目は使われなくなるという。でも吉村は奇人をしっかりと扱う振る舞いをするので「吉村は意外と使える/徳井は奇人だから使えない」ってなって、仕事が分かれていきました。そこから5年間くらいは仕事量に差が出るようになりましたね。でも俺は売れたいわけではなく、面白いと思われることが第一だったので、料理食べてただ「おいしいです」って言うくらいだったら、あの時海外ロケで死んでた方がマシだと。
ーーなるほど……。
徳井:でも難しいんですよね。奇人の振る舞いを貫くのって。デヴィ夫人と二人でロケをした時も、俺としてはデヴィ夫人が怒るようなことはしたくなくても、台本上やらざるを得ないとかありました。もちろん仕事なのでやりますけど、本心としてはやりたくないなって思っていた日々もあります。あえて奇人ぶらなきゃいけない時期がありました。
ーーそんな葛藤があったとは。
徳井:みんな葛藤はあると思います。オードリーの春日とかもあったと思いますよ。本にも書きましたが、(極楽とんぼ)加藤さんが「人って色んな顔があっていいんじゃないの」っておっしゃっていたことがあって。「恋人といる時、親といる時、友達といる時、みんな雰囲気違う。だからお前がバラエティに出てるときの顔が違っても、それはそれでいいんだよ」って話はよく聞きました。もし今も奇人のマインドだったら、こうして取材を受けている時に突然大きな声を出したりしなきゃいけなくなるんですけど、まあそれはそれ、みたいな(笑)。
ーー本でも「全力で間違った方へ走る」ことの大切さが書かれていますよね。その経験が後に大きな糧になると。
徳井:今思えば、若い頃の「面白ければいいんでしょ」という考えは間違ってたと思いますね。でもそれがなかったら今の俺の立ち位置はないし、仕方がない間違いだったのかなとは思います。もし当時に戻れるなら時短で売れた方が良いので、指摘はすると思いますけど。
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