平成ノブシコブシ徳井健太が考える「正解なき」芸人道―東野幸治でさえ敗北した道
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東野から「そろそろ芸人から嫌われろ」と言われた気がした
ーー東野さんがご自身の連載の後に徳井さんを指名されたとありましたが、東野さんはなぜ徳井さんに任せたいと思ったのか。
徳井:うーん、何なんでしょうね。でもこれは麒麟の川島さんが言ってたんですけど、田村さんの本が売れた時に、これまで話したことのない東野さんからいきなりDMが届いて、食事に誘われたと。そこから半年間くらい結構な頻度で食事に行くようになったそうです。でもそのあと急に連絡が途絶えた。
ーーおお!?
徳井:僕自身も「面白いから売れると思ったんだけど全然、売れる気配ないから」っていう理由で、東野さんのラジオに呼ばれたことあったんですよ。川島さんの時も「川島はすごく面白いのに田村の陰に隠れて腐ってしまうんじゃないか」って思って声をかけたみたい。でも「誰かのため」みたいなことを東野さんは決して言わないんですよね。ただ食事に誘っただけ。多分ずっとそういうことをされてるんだと思います。僕ね、暗に(東野さんに)「そろそろ芸人に嫌われるような仕事もしてみろや」って言われているような気がしているんです。
ーー「芸人に嫌われるような仕事」ですか。
徳井:面白いことをやってたら芸人には嫌われないんです。ただ全員が、特技がそこにあるわけでもない。僕みたいな考察めいたことって、芸人さんからしたらもちろん嫌がる人もいるし、世間もまあ賛否両論だと思う。俺はそこにビビッて、芸人に嫌われるようなことはなるべくしてこなかったんですけど、逆に吉村はそういうことも率先して頑張ってました。だから吉村は「芸人のくせに」とか「つまんない」みたいな賛否の“否”の方を若いころから喰らってたと思います。俺はそこを逃げるように「でも徳井は面白いからな」「変わってるからな」って言われるようなことばっかやってきて、東野さんなりに「もうそれはいいだろう」と思ってるんじゃないかなって、勝手に思ってます。
ーー自分に置き換えて考えると、同業者のすごさを語るのは難しいし、その仕事が評判がよく需要があったら嬉しい反面少し傷つくんじゃないかなと思ったりしました。徳井さんは「他の芸人さんの素晴らしさを語る」という需要に傷いたことはありましたか。
徳井:それはないかもしれないですね。「自分はそれで良いのだろうか」みたいな感情は、とうの昔に置き忘れてきました。『ゴットタン』に出始めた頃も、一緒に出演している(インパルス)板倉さんや(ハライチ)岩井と比べると、俺は全然知名度もないし、面白くもない状態で使ってくれたという状況だったんですよ。それなのに、前に出ることもせず、当たり前のことしか言わないことで、俺を陰で押してくれた人たちが「ほら、やっぱ徳井使えないじゃん」って言われるのは避けたいなと。だから面白くなくてもいいからとにかく俺らしく、前に出ていこうと思うことの連続ですかね。
ーーそういう心境になったのはいつくらいからですか?
徳井: 恐ろしい話なんですけど、『ゴットタン』に出るまではマジで思ったことがなくて。(千鳥)ノブさんが『ゴッドタン』に出た時、スタッフさんとの打ち上げで「(『ゴッドタン』は)死ぬ気でやってもらわないと困る」と言われたって、その話をノブさんから聞いていて。その後に俺に「腐れ芸人」の話がきたので、なるほど……と。今まで俺がやってきた仕事も、必ず誰かが頭を下げて取ってくれてたんだっていうのを気付いていなかったんですよ。吉本って仕事は回ってるといえば回ってるので、勝手に仕事が来ているような気持ちでいたんですよね。中にはマネージャーが頭を下げたものもあるだろうし、誰かの代わりとして無理やり奪った仕事もあるだろうし……というのを35歳になるまで気づけなかった。
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