『やがて海へと届く』の浜辺美波が過去最高のハマり役となった理由
#浜辺美波 #ヒナタカ
実写映画でありながらアニメを取り入れた理由
中川龍太郎監督は、彩瀬まるの原作小説から変更を加えた主軸について、主人公と親友の関係性、そして2人をつなぐビデオカメラという装置にあると語っている。写真ではなく映像を用いたのは、「写真は一瞬を切り取りその瞬間を止めるので、ほとんど永遠を残せます。けれど映像は、時間のイメージです。真奈はすみれを失って現在進行形で傷ついている、それを描くには映像が必要」という意図があったそうだ。
映画の終盤の舞台となる「場所」も、原作にはない。ここでは明言しないでおくが、この場所を物語の終盤に据えたことで、前述した喪失感というテーマに、より説得力を持たせることにも成功していた。
さらなる映像作品としての魅力は、実写映画でありながらアニメーションを一部取り入れていることだろう。原作の幻想的な世界観を示すと共に、「人の想い」も表現したアニメは例えようもないほど美しく、淡く尊い物語に彩りを与えている。
中川龍太郎監督にとって、本作のタイトルにもある「海」は原風景のひとつであり、自身が高校生のときに出した詩集「雪に至る都」にも海のモチーフが何度も出てきている。美しい命の源であり、時に命を奪う海の恐ろしさ、そこで起こる「命の循環」という壮大なテーマも、このアニメパートおよび、作品全体の物語からも感じ取れるかもしれない。
さらに中川龍太郎監督は、世界はいま悲惨な状態にあるという現実の認識を踏まえつつ、「普通に散歩をしていれば夕陽がものすごく綺麗なことに気づく、世界は美しいと気づく。そういうところにもっと目を当てて、露悪的じゃないもの、生命を称揚するようなものを作っていく必要があるのではないか」とも語っている。
現実を生きていれば誰しもが喪失感を得るし、現実ではさらに大きな悲劇も起こっている。そんな世界でも、何か美しいものや生きる望みを見つけられるかもしれない……そんな希望も、本作を観ればきっと得られるだろう。
『やがて海へと届く』
全国大ヒット公開中!
岸井ゆきの 浜辺美波/杉野遥亮 中崎敏/鶴田真由 中嶋朋子 新谷ゆづみ/光石研
監督・脚本:中川龍太郎
原作:彩瀬まる「やがて海へと届く」(講談社文庫)
脚本:梅原英司 音楽:小瀬村晶 アニメーション挿入曲/エンディング曲:加藤久貴
エグゼクティブ・プロデューサー:和田丈嗣 小林智 プロデューサー:小川真司 伊藤整
製作:「やがて海へと届く」製作委員会 製作幹事:ひかりTV WIT STUDIO
制作プロダクション:Tokyo New Cinema
配給:ビターズ・エンド
C) 2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事