『やがて海へと届く』の浜辺美波が過去最高のハマり役となった理由
#浜辺美波 #ヒナタカ
浜辺美波が演じてこその浮世離れしたキャラクター
その「いなくなってしまった憧れの存在」を体現したかのような浜辺美波は、過去最高のハマり役だと断言できる。誰もが見惚れてしまうような美少女であり、一方で自由奔放を通り越して少し常識外れな振る舞いもするため、ミステリアスであると同時に浮世離れした印象も持つ。ただそこにいるだけでも見逃せないのに、引っ込み思案な主人公をグイグイと引っ張るため、観客にとっても絶対に忘れられない人物として映るようになる。
実際の映画本編では、浜辺美波の出演時間は決して多いとは言えない。だが、浜辺美波というその人が強烈なまでの魅力を持っているおかげもあって、映画全体を支配したと言ってもいいほどの存在感を放っている。『君の膵臓をたべたい』(17)での余命わずかなのに気の強い少女、ドラマおよび映画『賭ケグルイ』でのギャンブラーなど、ややエキセントリックで「濃い」キャラクターも演じてきたからこそ、今回の役も説得力をもって体現できたとも言えるだろう。
なお、中川龍太郎監督は、「(浜辺美波演じる)すみれは、真っ直ぐすぎて感情を出せない人です。なので、どこか人形のような、何を考えているのか分からない感じになればいい」と考え、演技が一面的にならないように演出したという。この「何を考えているのかわからない」も、後の「いなくなった親友の真意を掴めないでいる」主人公の心情につながっているため重要であり、やはり浜辺美波というその人が演じてこそ際立つキャラクター性だと感じたのだ。
時間や空間を超えたラブストーリー
もちろん、主演を務めた岸井ゆきのも素晴らしい。親友が不在である苦しみをずっと抱えた上に、さらに身近に不幸が起きてしまったからこその、堪えきれない想いを、これ以上はないというほどに表現しきっている。だからこそ、過去の浜辺美波との関係性とやりとりが、儚く尊いものとして胸に迫るようになっている。
また、中川龍太郎監督は主人公と親友の関係性を、観る人によってさまざまな捉え方ができることを前提として、「時間や空間を超えたラブストーリー」だと認識しているという。中心に憧れの感情はあるが、恋愛に近い感情なのか、親密な友情に近い感情なのか、主人公にとっては未分解な感情で、その感情をうまく伝えられないまま親友を失ってしまったと考えているのだそうだ。
主人公と親友の関係は一種の「百合」ものとしても捉えられるが、主人公が抱いている感情はもっと複雑だ。その簡単には言語化できない関係性そのものを、ぜひ岸井ゆきのと浜辺美波のコンビネーションから、感じ取ってほしい。
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