トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 現実と物語の境目を曖昧にする技術
今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識③

『ファンタビ』『ハリポタ』を世界的名作にした現実と物語の境目を曖昧にする技術

『ファンタビ』『ハリポタ』を世界的名作にした現実と物語の境目を曖昧にする技術の画像1
日本テレビ「金曜ロードショー」公式サイトより

 今週の金曜ロードショーで放送されるのはJ・K・ローリングのハリー・ポッターシリーズ、「魔法ワールド」シリーズの『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。

 これは『ハリー・ポッターと賢者の石』の中でハリーたちが魔法生物(同作に登場する架空の生物)について書かれた教科書「幻の動物とその生息地」の著者、ニュート・スキャマンダーを主役にしたスピンオフ、という前提の説明がやたらと多い!ハリー・ポッターシリーズに興味のない人はここで躓くんだけど、この後も色々専門用語が出てくるので我慢してください。

 ちなみに「幻の~」は現実世界(我々の暮らしている世界だ)でも出版されている。著者のニュート・スキャマンダーというのはローリングのペンネームなんだが、「そういう作者が実在していて、本が出ている」ということになっているのだ。もちろんハリー・ポッターはローリングが書いた架空の世界の話だけど、この「現実と架空の境目を曖昧にする」ことで物語への没入感を高めたことがハリー・ポッターシリーズが世界中に広まった理由のひとつだろう。

 舞台は1926年のニューヨーク。ニュートはノー・マジ(魔法を使えない普通の人間)のジェイコブと雑踏の中でぶつかってしまい、お互いが持っていたカバンがすり替わってしまう。カバンにはニュートが保護していた魔法生物たちが入っていたが、すり替わりが原因で魔法生物たちはカバンの外へ逃げ出してしまう。

 その頃ニューヨークでは街が不自然に破壊される事故が勃発し、ニュートは犯人と勘違いされ、アメリカ合衆国魔法議会(魔法使いたちがノー・マジに存在を知られないよう設立した政府機関)の本部に連れていかれるが、カバンがジェイコブのものと替わっていたことで難を逃れる。カバンを取り戻すも外へ出てしまった魔法生物たちはあちこちで騒動を巻き起こす。ニュートはジェイコブの協力を得て魔法動物たちを捕まえるために四苦八苦。

 魔法生物たちはモグラとカモノハシを合わせた外見のニフラーや植物の茎みたいなボウトラックルといった可愛らしいものもいれば、エルンペントやグラップホーンといった大型(ほとんど恐竜サイズ)もいて多種多様。これら逃げ出した魔法生物たちを一体一体捕えていく様子はまるでポケモンのようで、ローリングも影響されたんだろうか?

 ただ劇中、ある魔法生物を捕まえるためにゴキブリを餌にするんだけど、CGでリアルに描いた“アノアレ”が…そういうのは、ポケモンにはなかったな!

 ニュートとジェイコブは魔法生物、ゲットだぜ!道中の果てに暗躍する悪しき魔法使いの存在と陰謀を知ることに。

ニュートを演じるエディ・レッドメインはイートン校卒、ケンブリッジ大へ進学という名門出のエリートだが、本作では親しみやすさがあるも、どこか抜けたところがあるとぼけた役を好演、冴えないおじさんのジェイコブを演じたダン・フォグラーとの組み合わせは見事な凸凹コンビっぷりで笑いを誘う。

 ハリー・ポッターシリーズでは子供から大人になるまでの成長物語だったが、こファンタスティック・ビーストシリーズでは大人が一生懸命やってますといったドタバタ騒動で、ハリー・ポッターを卒業した年齢の子供たちが次に読むものとしてピッタリ。ハリーやロンにきゃあきゃあ言ってた少女たちが今度はニュートのイケオジぶりにハマるわけである。よく考えられてるなあ。

 こういうキャラクターを次々創造できるのがローリングの魅力なのだなあ。若い人向けには少年のキャラクターを、中年読者にはイケオジを、とジャニーズ事務所が世代ごとに受けるイケメン・美少年を毎年輩出するようにローリングが生み出すカッコいい男たちと没入感のある物語に世界中がのめり込む理由もわかる気がします。

 この物語も5部作予定、もうすぐシリーズ第三弾が公開されますので!

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2023/02/24 11:43
ページ上部へ戻る

配給映画