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白鴎大学ビジネス開発研究所長・小笠原教授「勘違いの地方創生」【6】

コンテンツツーリズムに各地方は対応できてるか?「聖地巡礼」できる街できない街

コンテンツツーリズム、うまくやっている街・そうでない街

――とはいえ、さきほど仰ったような「ある日突然、たくさんの人がやってきた」場合のように、事前に地元が用意することができないケースは多々あるわけですよね。急に対応しろというのも難しい話なのでは……。

小笠原 だからこそ、普段から準備できているかどうかが問われるんです。私は、「今になって『我々も地方創生事業を始めましょう』とやっている自治体は、すでに遅れを取っている」ということをよく言っています。地方創生というと国から補助金をもらうための受け皿だと思っている人はまだまだ多い。そうではなくて、地域の中で何か稼ぎどころが出てきたときに即座に動いたり準備したりできるようになる、そしてそういうことを持続的に取り組める人々を地域に増やしてゆくことが肝要なんです。でなければ事業の成果を享受できません。コンテンツツーリズムでブームになっている街の中でも、うまくやっている街とそうでない街ははっきりわかれて、それは他ならぬ観光客にも見抜かれてゆくと思います。

 一方で、そのブームが「どれくらいの規模で対応すべきものかどうか」を考えることも重要です。たとえば、資料館のような施設は専門業者に依頼してある程度のお金を払えばかなり立派なものをつくってもらえます。でもそうした事業者は多くが東京の会社で、そこに頼ると地元の貴重な資金が東京に流れていく構図になってしまう。

――資料館というと、子どもの頃に遠足で訪れたようなちょっと古びた施設を思い浮かべるのですが、専門業者がいるくらいに需要があるんですね。

小笠原 地方創生の文脈もあって、「地元から地域の魅力を発信!」タイプのプロジェクトは流行りになっています。同時に、多くの地域では長く地道に郷土史研究をやってらっしゃる方がいて、そうした方々が「地元の資料館がほしい」と考えるのは自然なことです。ですが、つくったはいいが人が来ない、あるいはさきほど話したように何かのきっかけで人が訪れても地元全体への利益にはなかなかつながらない、そういうケースもあります。

 ですから、そこを判断することこそが役所の仕事だと思います。持ち出しの事業になっていないか、ちゃんと適切な利益をとっているのか、そもそも今はやっているそのコンテンツに乗っかるべきなのか。「ドラマで取り上げられた」「アニメの舞台になった」といったひとつひとつの出来事に逐一、自治体が税金を投入していく必要はないんじゃないかと私は考えています。

――その作品にコミットすることで、地元が稼げるかどうかを判断する役割をすべきだ、と。

小笠原 そうです。それに付随して地元が利益を享受できなければ、慌てて取り組む意味は薄いですよね。

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