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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > テレ東は人の欲望を解放する?

テレ東は人の欲望を解放する? 定食、デパート…そして“ハコ”

バナナマン・設楽「もし、真夜中の誰もいないデパートで自由にすごせるとしたら、あなたは何をしますか?」

 次にとりあげるテレ東のワンテーマ系バラエティは、22日の『真夜中のデパート自由に使えたら』だ。

 番組の内容は、ほぼタイトルが説明している。3人の芸能人が深夜の誰もいないデパートを訪れる。彼ら・彼女らはそこでいったい何をするのか。そんな一部始終を、見届人のバナナマンの2人(設楽統、日村勇紀)とともに、店内に設置された無人カメラをとおして観察する番組である。放送は全2回。22日は第1回の放送だった。

 番組の冒頭、設楽がストーリーテラー風に今回の趣旨を説明する。

「もし、真夜中の誰もいないデパートで自由にすごせるとしたら、あなたは何をしますか? ひとり黙々と欲望を解放する者たちの、真の人間性と狂気がそこに」

 欲望の解放、という言葉がもっとも似合うような行動を見せたのは酒井貴士(ザ・マミィ)だろうか。彼は入店するなり、ほとんど迷いも見せず惣菜コーナーを物色。手はじめに焼き鳥を2本食すと、エレベーターを上がり生活雑貨フロアへいき、トングとトレー、ビーズクッションを手にふたたび惣菜コーナーにもどった。

 彼は、惣菜コーナーの通路の真ん中にクッションをおき、深々と身を沈める。そして、うなぎの蒲焼を4枚重ねてほおばったり、うなぎにエビ天を挟んだものにかぶりついたり。特に何かをしゃべるわけでもなく、ひとり黙々と食欲を解放する酒井。その挙動にはなんだか“こそ泥感”もただよう。

 野田クリスタル(マヂカルラブリー)の欲望は、すこし変わっていたかもしれない。スポーツショップをおとずれた野田は、衣服コーナーをうろうろ。試着室に入ると、リュックのなかから持参したゲーム機をとりだす。さらに、デパート内を歩きまわりクッション、寝袋、イス、掃除機、タオル、加湿器などをあつめていく。

 リュックにさまざまなモノをつめこみ、試着室にもどった野田。彼はあつめてきたモノで試着室の居心地をよくすると、そこでくつろぎ始めるのだった。狭いところにいろいろとモノをためて拠点にしていく感じ。それはまるで、小動物が巣づくりをしているかのよう。それこそ、彼が飼っているハムスターのように。

 3人目の松村沙友理の欲望も特殊だ。フロアマップを確認して店内をひととおりグルグルまわったあとは、家電コーナーで炊飯器を物色。米、インスタント味噌汁、茶碗、箸をゲットするとふたたび家電コーナーにもどり、ご飯を炊きはじめるのだった。設楽が「1人で3合炊き炊いて食べちゃう」と語る米好きの彼女の欲望のかたち。炊飯器を床にじかに置かずいちおう箱に乗せるところが、欲望を解放するなかでものこる倫理を感じさせる。

 人間が欲望を解放したらどうなるのか。このテーマ自体はだれもが考えそうなものだ。が、そのテーマが「真夜中のデパートを自由に使えたらどうするのか」というちょうどいいところに落としこまれている。デパートには何があるのかだいたい誰もが知っているので、状況を理解しやすい。自分だったら何をするだろう、と思わず考えてしまう。アイテム数がめちゃくちゃ多いモノボケを見ているような、そんなおもしろさもある。

 また、『黄金の定食』でシソンヌ・長谷川は、定食をとおしてその人の欲望が見えると語っていたけれど、それはデパートにもいえるのかもしれない。自分の欲望をデパートというハコを使って満たそうとしているのか、デパートというハコによって欲望が過剰に引きだされてしまっているのか、それが混沌となる感じもふくめて。

 人間の欲望を垣間見るテレ東のワンテーマ系バラエティ。いずれも放送回数は残りわずかだ。放送回数が少ないのも、ある欲望が満たされてもすぐに満たされなさを感じてしまい、別の欲望をもとめはじめてしまう、そんな人間の欲望の際限のなさのあらわれかもしれない。次々とプログラムが変わっていくテレビもまた、人の欲望を刺激し、時に過剰に引きだすハコという面があるのだろう。

 そんなハコを、私は毎日見ている。そしてたとえば、テレビタレントとしての水谷隼を見ていてなんとなく感じる引っかかりをなんとか突きとめ言葉にしたい、そんな欲望をおさえることができないでいるのだ。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2022/03/29 13:00
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