『ぼけますから、よろしくお願いします。』続編、池上彰が信友直子監督に見た“プロ根性”
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101歳で新聞三紙に目を通す父
「お父さまは知識欲が強い方なんですね。広辞苑の第七版とかジーニアスの英和辞典・和英辞典とか、後ろにチラチラと映っていて。すみません、私そんなところばかり見ちゃうんです(笑)」と池上さんが指摘すると、2人のトークは現在101歳という信友監督の父の話題に。
「同じ事柄でも新聞によって取り上げ方が違うからと言って、いまだに父は新聞も三紙とっているんですよ。私も小さい頃から「偏ったものの見方はするなよ」と言われて育ってきました。父は戦前の人で陸軍にとられてしまったので、やりたかった学問を戦争のせいでできなかったんですね。その無念を抱え続けているからいまだに勉強しているんだと思います」(信友監督)
現代でも、とくに女性の場合、介護を理由に休職・退職をせざる得ない人が多いという社会問題があるが、信友監督は父親のそうした思いもあったからこそ、映像の世界で仕事を続けて来られたと感じているようだ。
「自分が年老いたからといって娘が仕事を辞めて帰ってくるなんて、自分で許せないんだと思います。やはり娘としては『帰ろうか?』と言うんですが、父から『いや、あんたは仕事があるんじゃけん。東京におりんさい』と言われ、ほっとした部分もありますね。私は女1人で自分が稼がないといけないし、仮に仕事を辞めると父が亡くなった後の暮らしへの不安はあるので。介護サービスの方々のご協力もあり、仕事を続けられていることは幸運です。とはいえ父も年齢が年齢なので、少しずつ実家に帰る頻度を増やして、2~3年以内に父との2人暮らしできればなと。父のプライドを保ったまま、なし崩し的に同居しようと狙っています」(信友監督)
老いや介護を扱い、どんな家庭にも起こり得る宿命を実の家族ならではの優しい目線で捉え、貴重な人生の記録となった本作。監督自身が語りも務めており、重いテーマ性だけではなく楽しさやユーモアのある一作として、年齢を問わず多くの人が“自分の物語”として受け入れられるに違いない。
「父と母との別れを見ながら、すごく崇高なものを見たような気がしていて。生きているってやっぱり素敵なことだなと、襟を正されるような気持ちになりました。父も母も貧しく倹しく、でも見ていて幸せを感じさせてくれる。コロナ禍などで気持ちが暗く、ささくれ立つような出来事も多い世の中でもありますので、60年連れ添った夫婦の愛情物語であたたかい気持ちになってくだされば嬉しいです」(信友監督)
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